5位:ルール無用の恋愛バトルロイヤル!『School Rumble』
塚本天満、ごくごく普通の女子高生。彼女の意中の人である烏丸大路は、かなり風変わりな少年です。天満は烏丸との距離を縮めようとしますが、空回りして上手くいきません。
播磨拳児、明らかに不良の男子高校生。彼の意中の人である塚本天満は、健気で天然な少女です。播磨は天満との距離を縮めようと奮闘しますが、彼もまた空回りをしてしまうのでした。
謎の男、烏丸を頂点に、天満と播磨と彼らの周囲が連鎖的に巻き込まれていくドタバタラブコメディ!
- 著者
- 小林 尽
- 出版日
- 2003-05-16
2002年から「週刊少年マガジン」を中心に連載されていた小林尽の作品。登場人物の大半が自身の恋に悪戦苦闘する模様を描いたラブコメ漫画となっています。
本作には普通の恋愛漫画と大きく異なる点があります。通常、男女の恋愛を題材にしたものは、主人公と意中の相手との二者関係、もしくはそこに第三者が加わった三角関係というのが定番です。本作においてはその構図は当てはまりません。
まず主人公の天満ですが、彼女は烏丸に恋して、播磨に恋されています。そして播磨ですが、彼は天満に恋をして、天満の妹である八雲に恋されています。その八雲は花井春樹に恋されて、その花井は……と、このように、一方通行の片思いの関係が数珠繋ぎ状になっているのが本作の特徴。
さらにその読めない揺らぎを大きくする存在、沢近愛理。本作において彼女は例外で、一方的に恋するだけのキャラです。その相手は播磨拳児。天満とは親友関係にありますが、同時に恋敵でもあります。しかし、前述したように天満は播磨に対してその気はまったくなく、むしろ播磨に恋する八雲とライバル関係。
恋の数珠繋ぎが、このように播磨の周辺でだけ大混線しています。主人公は一応天満に設定されているはずですが、事実上の主人公と言えるのは播磨の方です。
果たして誰が誰とくっつくのか。通常の恋愛漫画にもあるように、すれ違いや勘違いが横行して、もはや誰の恋がどのように発展するのか、本作の展開はまったく読めません。
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4位:恋愛とは、共犯者を作る罪悪なのかも知れない。『惡の華』
春日高男はクラスメイトの佐伯奈々子に淡い恋心を抱く普通の中学生でした。成績は平凡以下。一方、佐伯は容姿端麗、成績優秀と春日にとっては高嶺の花です。内気な春日の日常は、何も起こらずに続いていくはずでした。ある日の放課後、置き忘れた愛読書を取りに教室へ戻った彼は、佐伯の体操着を発見。魔が差してそれを盗んでしまいます。
翌日、その件でホームルームが開かれました。内心怯え、罪悪感に苛まれながらも、春日は名乗り出ることはしませんでした。その日の帰り道、春日は仲村佐和と出くわします。協調性のない毒舌家の仲村。彼女はいつもの無表情を捨てて、笑顔で春日に告げました。春日の犯行を見ていたこと、バラされたくなかったら自分に従うこと……。
- 著者
- 押見 修造
- 出版日
- 2010-03-17
「別冊少年マガジン」誌上で2009年から連載されていた押見修造の作品。中高生の心の負の側面をグロテスクに描き出した問題作です。
タイトルにもなっている『惡の華』とは、主人公・春日の愛読書でもある、フランスの詩人シャルル・ボードレールの詩集のこと。その作風は憂鬱と退廃、そして絶望。およそ中高生のきらめく青春とはかけ離れた内容となっています。押見自身が中学生の時分に親しみ、タイトルに冠しただけあって、本作の内容もボードレールに引けを取りません。
春日は内向的で社交性の低い少年です。この年代にしばしば見られるように、自意識過剰なところがあって、ボードレールを愛読する自分に優越感を感じている様子があります。
彼に絡んでくるヒロイン格の仲村。普段は無表情を貫く冷淡な少女ですが、口を開けば毒を吐く凄いキャラです。春日には、彼の秘密を握っていることから優位に立ち、彼といる時だけ感情豊かになります。またその秘密を盾に、春日へは無茶な要求を繰り返し、彼の日常を塗り替えていきます。
「うっせー、クソムシが」(『惡の華』より引用)
そしてもう1人のヒロイン、佐伯。上記の2人が閉塞した中2病的存在であるのに対して、佐伯は一見社交性も高く優良な学生像そのものです。しかし、周囲から押しつけられた期待や価値観に翻弄され、内心では自己との差異に苦しんでいます。
春日から佐伯への一方的な感情が、仲村の介入によってどんどん変化していきます。春日と佐伯の関係、春日と仲村の関係。そして春日と仲村に対する佐伯の関係。恋愛とは常に健やかで明るいものではありません。愛憎という言葉もあるように、憎しみ、嫉み、そういったある種反社会的な情動もまた、恋愛の一形態なのです。
3位:秘めた想いとは裏腹な「嫌い」『クロスゲーム』
主人公の樹多村光(きたむらこう)、通称コウはスポーツ用品店の1人息子です。近所でバッティングセンターを営む月島家とは、商品を卸す関係で、幼い頃から付き合いがありました。特に同い年で、同じ日に同じ病院で生まれた次女の若葉とは仲が良く、小学生ながら両想いになっていました。
反面、月島家三女の青葉とは犬猿の仲。青葉は野球に興味のないコウと違って、生粋の野球少女です。男子顔負けの素晴らしい投手。コウも表には出さないものの、青葉のピッチングには密かに憧れていて、若葉の勧めもあって隠れてトレーニングをしていました。
コウが小学5年生の夏のキャンプ。若葉は川で溺れる下級生の子を助けるために飛び込み、溺れて亡くなるという事故が起きてしまいます。悲しみに暮れるコウと青葉。若葉はキャンプの前日に、コウが甲子園に出場するという夢を見ていました。コウはこの件をきっかけに、野球の道を志すことになります。
- 著者
- あだち 充
- 出版日
- 2005-09-02
「週刊少年サンデー」で2005年から連載されていた、あだち充の作品です。
甲子園。幼馴染みの3人。うち1人が亡くなる。本作で重要になるこれらの要素で思い出されるのは、やはり同作者の名作『タッチ』でしょう。あちらは才能ある亡くなった弟・上杉和也の代わりに奮起する弟・達也、双子の兄弟と幼馴染みの浅倉南という三角関係から一角を欠いた恋愛模様を描いた作品でした。
本作のキーパーソン、若葉は『タッチ』における和也と南の役を兼任しています。若葉はコウが野球を始めるきっかけであり、甲子園を目指す動機でもあり、そして初恋の人でもあります。とはいえ、『タッチ』を想起させるのはここまでで、コウと青葉の関係はこれまでになかったものです。
コウと青葉は犬猿の仲。これはお姉ちゃん子だった青葉の嫉妬によるというのがまず理由の1つ。そしてもう1つは、成長した青葉が、両想いなのに亡くなってしまった姉の若葉に引け目を感じて、コウと距離を取ろうしている現れでもあるのです。
コウは中学、高校と本格的に野球に打ち込むようになります。若葉の助言通り、ピッチングフォームのお手本は青葉です。コウはめきめきと上達していき、やがて自然に青葉も彼を意識するようになっていきます。
本作では野球を通した青春、素直になれない、内に秘められた想いが爽やかに描かれます。