第3位 コーヒーの香りと君の言葉『初恋のあとさき』
第4位で紹介した『嵐のあと』に榊のセックスフレンドとして登場するカフェオーナーの美山。『嵐のあと』ではノンケに本気にならず、誰も好きにならない榊だからこそ好きだった。と告白しています。そんな美山の過去がこの作品で明かされることになるのです。
偶然打ち合わせに訪れたカフェで仁科は10年ぶりに学生時代の親友、美山と再会します。美山はカフェのオーナーを務めており、仁科は再会を懐かしみますがどうやら美山は自分に気づいていない様子。
どうしても気づいて欲しいという思いから店に何度が足を運びますが、再会を喜ぶ仁科とは反対に美山は仁科を恨んでいて「もう会いに来るな」と言うのです。
仁科が忘れていた、美山の人生を変えるある出来事が原因でした。
- 著者
- 日高ショーコ
- 出版日
- 2012-02-28
こちらの作品、なんといっても美山が不憫かつ可哀想です。よく「やった方は忘れてもやられた方は一生忘れない」と言いますが、まさにこの作品にピッタリの言葉ですね。
学生時代、本気で仁科に恋をしてその気持ちを大切にしていた美山と、一時の気の迷いと切り捨てて一方的に美山にきつく当たった仁科。仁科を思う美山の気持ちを考えると、10年分の切なさが胸を締めつけます。
自分に人生を変えるほどのトラウマを残した男が、もう傷も癒えようかという10年の月日を全く無視して好奇心だけでズカズカ会いに来るわけですから。美山が冷たく当たるのはもはや当たり前。それなのに、仁科を好きな気持ちを未だに捨てられないわけですから初恋とは本当にタチの悪いものですね。
この作品は美山と仁科の「トラウマの葛藤」を見ることができる一作です。是非『嵐のあと』とあわせてお読みください。
第2位 時代と立場に翻弄される2人『憂鬱な朝』
舞台は明治時代の日本。まだ爵位が存在していた時代です。
父の死をきっかけに10歳にして子爵家当主の座を受け継ぐことになった久世暁人。教育係として側につくことになった桂木智之は有能で礼儀正しく美しい、社交界でも一目置かれる存在でした。しかし、そんな桂木は何故か暁人には厳しく冷たい態度ばかり取るのです。
疑問を感じながらも優秀になればいずれ桂木も自分を褒めてくれる。そう信じて暁人は熱心に勉強しますが、どれだけ身長が伸びようとも、どれだけ優秀な成績を残そうとも桂木の態度は変わらず、その視線からは時折、憎しみさえ感じるようになります。
桂木への恋心とは裏腹に離れている桂木の心、その厳しい態度には深い訳がありました。
- 著者
- 日高 ショーコ
- 出版日
- 2009-03-25
こちらの作品はあらすじを書くのも難しいほど複雑な人間関係が描かれていて、BLというジャンルに収めてしまうにはもったいない作品になっています。
日高ショーコの圧倒的画力で描かれる明治時代の屋敷や装飾、服装はどれも緻密。この世界に引き込まれてしまうのは、もはや不可抗力と言えるでしょう。また、爵位を巡って繰り広げられる駆け引きの数々は大どんでん返しの連続なのでひと時も目が離せません。
最初はなかばレイプといってもいいほど強引に桂木を体で繫ぎとめる暁人でしたが、桂木の願いや過去を調べていくうちにその恋心はやがて献身的な愛へと変貌を遂げるのです。その一方で初めは子供の茶番だと暁人を軽くあしらっていた桂木でしたが、瞬く間に成長する暁人の愛にほだされ桂木も暁人に惹かれていきます。
この過程にはとんでもない紆余曲折があります。そして、恋心を自覚した桂木の想いとは反比例して刻一刻と暁人との別れが迫って来るのです。
時代と立場に翻弄された2人の「身分違いの葛藤」是非ご一読ください!
第1位 君が描く花の名前は。『花は咲くか』
広告代理店に務める会社員桜井と、無口で無愛想な美大生蓉一の成長と恋愛を描いた作品です。
仕事に追われながらも全盛期のように冒険した企画をすることのなくたった桜井はひょんなことをきっかけに蓉一の家を訪れます。住宅街の一角に佇む純和風な平屋と広大な庭は、古い物件ながらも非常に趣ある家でした。平屋は下宿になっており、蓉一は大学生なので形ばかりではありますが下宿の家主でもあります。
最初は無愛想どころか売り言葉に買い言葉で桜井とは水と油だった蓉一ですが、桜井に花の絵を褒められたことから少しずつ不器用で優しい桜井に惹かれていきます。心を開いてくる蓉一に徐々に好意を寄せる桜井でしたが蓉一にはとある過去があると知り、2人の関係は変化を見せ始めるのです。
- 著者
- 日高 ショーコ
- 出版日
- 2009-12-24
こちらは2人の恋愛模様というよりも、家族の死と父親の才能を背負ってしまった蓉一が桜井との出会いから成長をするサクセスストーリーになっています。
蓉一にとって下宿や絵を描くということは常に人に囲まれていた父親、蓉介の影響でした。最初は才能あった父親の死を自分が背負っていかなければならないという思いから下宿を営み、美術大学に通いますが、桜井と出会い桜井に対する思いだけは父親とは関係のないものでした。
初めて自分の意思で誰かを思い、行動した蓉一。桜井との恋をきっかけに本当の自分に向き合っていくのです。
一方で桜井も年上でいい大人の自分が大学生の蓉一に手を出すことに抵抗を感じつつも、好きな気持ちは抑えることができず自分だけに甘えてくる蓉一に陥落します。
出会いから多くを学び、恋をすることで少しずつ成長する2人の恋の花が咲くところを是非ご覧ください。また、蓉一の周りを取り囲む個性豊かな登場人物からも目が離せません。