オトコを描く漫画家、ヨネダコウ
デビュー作である『どうしても触れたくない』からスピンオフ『それでも優しい恋をする』。そして短編集『NightS』に、2017年現在連載中の『囀る鳥は羽ばたかない』。4作品全てが発売年度の「このBLがヤバい!」トップ10にランクインしている、まさにベストセラーBL作家です。
ヨネダコウの描くキャラクターは皆まごう事なき男です。BLなんだからそりゃ男だろう、というツッコミがあるかもしれませんがそういうことではありません。BLは男同士の恋愛を描いたジャンルですが、男といいながら女顔負けに華奢で可憐なキャラクターが多く登場します。つまり、BLとして描かれる世界はほぼファンタジーであり実在するゲイとは別物なのです。
しかし、ヨネダコウの作品はゲイの方からも人気を集めています。それはキャラクターや物語が男性的感性を持って描かれているからではないでしょうか。ヨネダコウの描くキャラクターは決して頬を染めて涙目で見上げてくることはありません。それなりにガサツで奔放で性欲のある男らしい男たちの男による恋と愛の物語。それがヨネダコウの最大の魅力です。
その画力と表現力から、青年漫画誌でも活躍中。今回はヨネダコウの男の世界が味わえるおすすめ作品を4冊紹介します。
第4位 ヤクザから整備士まで『NightS』
まずは第4位、ヨネダコウ初の短編集です。こちらは運び屋とヤクザ、男子高校生、車の整備士と営業マンの3つのストーリーが収録された1冊になっています。
表題作「NightS」に登場するのは運び屋唐津と、色気のあるヤクザ穂積。穂積から運びの仕事を請け負う唐津ですが、取引を重ねるたびに妖しくも色気のある穂積に唐津は翻弄されていってしまいます。これは仕事の取引なのか?それとも恋の駆け引きなのか?衝撃のラストまでハラハラドキドキ、目が離せません。
また、同時収録の「リプライ」は車の営業マンと整備士のお話です。仏頂面の営業マン、高見と腕の良い整備士、関。それまで営業に対してのイメージが悪かった関ですが、整備士にも気配りのできる高見を尊敬し惹かれていきます。しかし、高見には男だからと振られてしまい……。
- 著者
- ヨネダ コウ
- 出版日
- 2013-02-09
こちらの1冊だけでもヨネダコウの男の魅力を三種類も味わうことができます。
まず、表題作である「NightS」では秘密のある男の魅力。そして「感情スペクトラム」では思春期ならではの青臭い男の魅力。「リプライ」では働く男の魅力が描かれています。
「NightS」は、怪しい色気のある穂積とそれを楽しむ唐津の駆け引きだけでなく、麻薬の取引もあり二種類のドキドキに思わず夢中になってしまいます。気づけば読者が騙されている、そんな作品です。
また、仕事をする男たちを描く「リプライ」には、男性同士の恋愛の難しさを描くヨネダコウの魅力が詰まっています。プライドを持って仕事をしているからこそ、それに応えてくれる相手が現れて嬉しいと思える。そのようなきっかけは我々の日常にも潜んでいるのではないでしょうか?好きになって、悩んで悩んで悩んで、告白した結果、振られてしまうのは見ている方も辛くなります。しかし、後半の高見視点では物語が大きく展開するので是非最後まで見届けてあげてください。
仕事で疲れた1日の最後に、こっそり男たちの魅力に癒されてみませんか?
第3位 命をかけた男たちの任侠BL『囀る鳥は羽ばたかない』
続いて第3位は講談社FR@U漫画大賞を受賞した本作。こちらは、あらすじや帯などにもあるようにドMな組長と無愛想な部下のお話になっていますが、まったくもってエロ漫画などではありません。
ドMで淫乱なことで有名な若頭の矢代は、ひょんなことがきっかけで、ガタイのいい無愛想な新入り百目木と出会います。顔がタイプであったことと百目木がインポであるということが気に入り、矢代は百目木を側に置くようになりました。最初は矢代に対して「綺麗な人だ」という感情しかなかった百目木ですが、側で過ごすにつれて「誰とでも寝る淫乱ドM」な矢代の中に隠れる本質が見え始め、少しずつ惹かれていきます。
そんな中、百目木の妹が現れたことをきっかけに2人の関係は大きな変化を迎えることになるのです。
- 著者
- ヨネダ コウ
- 出版日
- 2013-01-30
何と言っても物語の構成に圧巻の1作です。1話目では矢代の親友である内科医、影山と年少上がりの狂犬、久我の物語が描かれているんですが、表紙の矢代はほぼ出てきません。しかし、これが後のストーリーで矢代という人間を表現する「起」になっていきます。
巻を追うごとに複雑になる組内で、因縁や激しくなる抗争の様子を描く本作は、もはやBL作品の枠を超えてヤクザ漫画でもあります。登場人物たちの職業をしっかりと調べ、その魅力を余すことなく描いているのはさすがといっていいでしょう。
矢代は事あるごとにインポである百目木にフェラをしますが、これもヨネダコウならではの表現になっています。百目木はインポなのでフェラをしてもなんの意味もありません。全く反応もしませんし、表情一つ変わりません。
しかし、百目木が矢代に惹かれるにつれて感じるようになるのです。つまり、百目木の気持ちの変化を、まさかのフェラで読者に伝えているんですね。驚くほど切なく描かれているので、こちらにも注目して読んでいただけるとより感情移入することができるのではないでしょうか。
また、ヤクザの話なのでスーツの男がわんさか出てきます。これはスーツフェチには堪らないので、スーツが好きな方はそれだけでも読んでみる価値があります!
心温まるとは程遠いですが、かっこいい男たちの命をかけた愛の物語がそこにはあります。繰り返しますが、ドMで淫乱な若頭のエロ本ではありませんよ。