3位:宝石にまつわる謎を解く『七つ屋志のぶの宝石匣』
二ノ宮知子作品の魅力のひとつは、知識が無いところから始まっても、専門家すら唸らせるほどの情報力。それをただ並べるだけでなく、取捨選択して読者にわかりやすい形で届ける能力は随一。多くの専門家たちが登場しますが、それぞれに違った魅力を持っています。
『七つ屋志のぶの宝石匣』は、女子高生の倉田志のぶが主人公。剣道部に所属している志のぶですが、実はとても不思議な力の持ち主。宝石の「気」を感じることができ、盗品や贋物、いわくつきの品は一目で見分けることが可能。そのため、母の実家である質屋、倉田屋で宝石の鑑定を任されています。
- 著者
- 二ノ宮 知子
- 出版日
- 2014-11-13
そんなハイパー女子高生の志のぶですが、実はイケメンの婚約者がいます。北上顕定は、フランスの老舗高級ジュエリー店の日本支店で外商を務める人物。女性を押しのけて商店街のコンテストで優勝するほどの整った顔立ちをしています。名家の出身でもある顕定ですが、祖母の章子たっての希望で倉田屋に質入れされた存在。3年過ぎたら志のぶと婚約するという契約で倉田屋に来ました。
なぜ質入れ、という理由は本編で明かされますが、宝石の価値を知る専門家でもある顕定と、宝石の持つ物語を見極めることができる志のぶは良いコンビ。宝石に纏わる謎を解いていきますが、穏やかな気質の顕定を志のぶがリードしていく場面も。恋愛的な方面の進みはかなりゆっくりですが、お互いに尊重し合い、大切にしていることが伝わるので、穏やかな気分で見守ることができます。
顕定の祖母である章子や友人の久世鷹臣など、アクの強いキャラクターも登場。1話完結型の連作なので、読後感もスッキリとしています。女性なら興味を惹かれるであろう宝石の世界、女子高生とイケメン婚約者の活躍に注目したい二ノ宮知子の作品です。
2位:超エリートへの夢が一転!?『天才ファミリー・カンパニー』
優秀であるがゆえに、天から与えられたとしか思えない才能を持っている人のことを、天才と称することがあります。それぞれの分野に多くの天才が存在しますが、優秀であるがゆえに他者と分かり合えない部分もあることも事実。しかし、社会は多様な人間が存在して成り立っているのです。
『天才ファミリー・カンパニー』は、IQ170という優秀な頭脳を持ち、将来はアメリカの名門ハーバード大学の経済学部を目指している夏木勝幸が主人公。高校生の勝幸は、11歳の時に父を亡くしており、キャリアウーマンの母と生活をしていました。
- 著者
- 二ノ宮 知子
- 出版日
- 2008-06-24
しかし、母が突然世界を放浪する小説家、田中荘介と夫婦別姓で再婚。同じ年の春という義兄弟との生活が始まります。突然増えた家族のおかげで、夢へと邁進する穏やかな生活が一変。勝幸は様々な事件に遭遇し、多くの人々と関わっていくことになります。
本作は天才とその家族をテーマとしているため、多くの天才が登場しますが、勝幸は優秀な頭脳を持つ天才。株の売買をこなし、ラジオだけで英会話を習得するなど、その優秀さを随所で発揮しています。春はその生い立ちからか語学が堪能、計算能力に長けハッカーをしている水野唯香や、飛び級でハーバード大学を卒業したアメリア・ワイズマンなど、これでもかというくらい優秀な子どもたちが勝幸に関わってきます。
基本的には天才児たちの日常や家族との関わりの中に、様々な事件が巻き起こるドタバタコメディですが、それぞれの家族の描かれ方が印象的。特別扱いをするわけではなく、ごく普通の家族としての絆が、目に優しく映ります。
1位:クラシックブームの火付け役!二ノ宮知子の代表作『のだめカンタービレ』
ドラマやアニメなどのメディアミックスがきっかけでヒットする作品は数多くありますが、本作はその一つと言ってよいでしょう。世にクラシック音楽ブームを巻き起こしたラブコメディとして記憶している読者も多いはずです。
- 著者
- 二ノ宮 知子
- 出版日
- 2002-01-08
音大のピアノ科に在籍しながら指揮者を目指している千秋真一。幼少のころに体験した飛行機の胴体着陸がトラウマとなり、飛行機恐怖症に。船舶恐怖症でもあるために海外へ行くことも出来ず、悶々とした日々を送っていました。
教授や彼女とも喧嘩別れし、酒に酔って帰宅した千秋は、自宅に入る前に寝オチ。目が覚めると、どこからともなく美しいピアノソナタが。こうして千秋は、のだめの部屋のゴミ山の悪臭の中、楽しげに演奏をするピアノ科在籍の音大生、野田恵、通称のだめとの運命的な出会いを果たします。
ピアニストの父と資産家令嬢の母を持ち、超エリートであるはずなのに、コンプレックスを抱え過ぎているためにどこか残念な千秋。オレサマな性格ゆえに素直になれなかった部分が、自由人のだめに影響されていく姿に、ニヤニヤしつつもエールを送りたくなります。
のだめは本能で生きる天才であり変態ですが、彼女なりに壁にぶつかる場面も。しかし謎の解決方法で脱却したりする姿は、爆笑しながらも、やはり万人には理解できない天才であるという妙な納得感があります。
のだめや千秋以外にも、音楽に打ち込んでいる様々な人物が登場。世の中には多くの楽器が存在し、曲が存在するのだと改めて気付かされます。二ノ宮知子の友人が、ゴミ屋敷の中でピアノを弾いているという写真から生まれた物語なんだとか。クラシック音楽をかけながら楽しみたい1冊です。