『西遊記』道中の案内人
- 著者
- 中野 美代子
- 出版日
- 2013-09-21
作者の中野美代子さんは中国四大小説の大長編『西遊記』シリーズを訳したひとり。
冒頭から”『西遊記』のおもしろさは、あらすじにはありません!”と言い切っていて、思わずごめんなさい!と言葉が出てしていました。というのも私も長いこと長編に挫折したまま部屋の隅に文庫を置きっぱなしだから。
本書ではこんな読み方があったのかと、本編をより楽しむための驚きの切り口が満載でした。
孫悟空の輪っかの名前は緊箍児(きんこじ)。「悪さをこらしめるためじゃないの?」とそんな単純な話ではありません!中国文化さらには孫悟空の体質に注目して、思いもよらない新解釈へと発展させています。
これだけでも面白い探求の一冊です。
Go to the west
- 著者
- 峰倉 かずや
- 出版日
- 2015-04-25
そもそも『西遊記』の原作を読みたいと思ったきっかけが、1997年より連載が開始されたコミック『最遊記』シリーズです。
タイトルの通り『西遊記』を題材にしながら青年誌ならではのハードボイルドなストーリーと破天荒なキャラクターたち。
三蔵法師は銃を愛用し、無邪気な笑顔を見せる孫悟空、細面でインテリズム漂う猪八戒、ワルなのにどこか優しい沙悟浄など好きにならざるを得ない要素も満載で、たちまち虜にさせられました。
その最大の魅力といえるのが彼ら登場人物が人間的であり弱さを抱えていること。
読み返すたび、私は強いメッセージを受け取ってきました。過去から逃れることはできなくとも、未来に小さな希望を見出していくことはできるはずだと。
現在もアニメ、舞台と形を多様にして『最遊記』シリーズが続いています。
―実は彼が微かすかな声で呟やいているのである。「俺おれはばかだ」とか、「どうして俺はこうなんだろう」とか、「もうだめだ。俺は」とか―
- 著者
- 中島 敦
- 出版日
- 1994-07-18
仲間の一人、沙悟浄に焦点を当てた異色作が『悟浄出世』と『悟浄歎異 ―沙門悟浄の手記―』。
作者の中島敦といえば、心を病んだ友人が虎に姿を変えてしまった『山月記』を思い出す方も多いでしょうが、文章の巧みさで描かれた沙悟浄。ひとりごとでブツブツつぶやく沙悟浄像にも必読の価値があります。
三蔵法師らと出会い旅する沙悟浄は言います。「生きものの生き方ほどおもしろいものはない」と。短い話ではありますが『山月記』と同様忘れられない話になることは間違いありません。
残念なことに作者の死から続編を読むことはできませんで、そのせいでしょうか。私の心には苦悩する沙悟浄が住み着いて、時折「もうだめだ」「納得いかぬ」とぼやき始めて困ってしまいます(笑)