3位:生死はあざなえる縄のごとし!『バンパイア 昭和不老不死伝説』
浅草のストリップ劇場にマリアという踊り子がいました。彼女は並外れた美貌と豊満な体の持ち主です。マリアの正体は人間ではなく、長年を生き、不老不死と目される生命体。時の権力者によって常に不老不死の秘密を狙われ続けています。
打って変わって平凡な高校生を演じる本田昇平。彼は10歳の時に両親と妹を無残に殺害されて以来、失語症に陥っています。また、彼にも誰にも知らせていない秘密がありました。微力な念動力の持ち主だったのです。
そんな昇平の前にマリアが現れます。彼女は自分を守るために、一緒に戦ってくれるパートナーを探していたのです。マリアと接触した昇平は、言葉を取り戻し、さらなる特殊能力に目覚めていくことになります。
- 著者
- 徳弘 正也
- 出版日
- 2005-06-03
本作は不死の存在「バンパイア=マリア」を軸として、人間の精神、奥底の願望を描き出す、ややバイオレンスな漫画となっています。昇平をパワーアップさせるマリアの接触はほとんどがセックスのため、性的描写も惜しげもなく行われます。
マリアは作中でバンパイアと呼ばれますが、いわゆる吸血鬼ではありません。驚異的回復力と無性生殖によって同一人物として生まれ変わりが可能なため、不老不死と思い込まれているのです。超常的存在ではないので、近代兵器で消滅させられる危険がつきまといます。
劇中の時代でマリアを狙うのは比丘尼クラブという組織です。十文字家が結成した秘密結社で、不老不死を探求しています。実際に、マリアがかつて失った右腕を研究し、飲めば寿命を引き延ばす薬を開発しました。組織の名称は、人魚の肉を食べたせいで800年生きたと言われる八百比丘尼伝説が由来でしょう。
比丘尼クラブからマリアを守ろうとするのは昇平だけではありません。マリアを神格化して崇拝する十文字篤彦という男が登場します。しかし、同じ目的を持ちながら、両者の行動は徐々にズレていきます。事実上、このふたりの思想の違いで物語が転換すると言っても過言ではないでしょう。
マリア本人と、己の欲望のために彼女の幻影を追う者達。人間の生死、人間の尊厳、正義とは何か、悪とは何か。物語の時は移り変わり、ちょうどバンパイアが生まれ変わるように作品も改題し、『近未来不老不死伝説 バンパイア』に続いていきます。
2位:全てを犠牲にして、彼女を愛する!『狂四郎2030』
舞台は2030年、日本。5年前に終結した第3次世界大戦の影響で世界人口の80%が失われた時代。かろうじて文明レベルを維持する日本は、ゲノム党による独裁体制が敷かれています。
主人公の廻狂四郎は、管理社会のほとんどの一般国民がそうであるように、生身の女を知りません。彼が唯一知る女は、バーチャマシンの仮想空間にいる「志乃」だけです。
そんな狂四郎はパトロール中、ひょんなことから人間の脳を移植された天才犬、バベンスキーを救出します。バベンスキーはバーチャマシンをハッキングし、志乃がAIではなく仮想空間にアクセスする現実の人間であることを突き止めました。狂四郎は志乃=ユリカに告白、ふたりは仮想空間で結婚式を挙げたのでした。
しばらくして狂四郎は、妻のために脱走した男の処刑を命じられます。男の姿に感動した狂四郎は、上官を殺害して夫婦を逃がしてやり、自らもユリカに会いに行く決心をしました。
- 著者
- 徳弘 正也
- 出版日
- 2010-11-18
本作は『ジャングルの王者ターちゃん』後に人気の落ち込んだ作者が、再起を賭けて青年誌で連載を始めた近未来SF漫画です。あらすじの通り、狂四郎の動機はユリカに会いに行くことなので、ラブロマンスの要素があります。ふたりは当初から精神的に繋がっていますが、肉体的には途方もなく離れており、七夕の織姫と彦星を連想させます。
本作の特徴は青年漫画ならではのエログロ表現でしょう。元から徳弘作品にその要素はありましたが、創作の場を移したことでより過激に変化しました。
経歴が抹消され一般には知られていませんが、狂四郎は大戦時の英雄で、驚異的な戦闘力を誇ります。戦いとなれば容赦なく敵を斬殺、文字通り真っ二つに。エロの方も多く、バーチャマシン上でのセックスから、現実のユリカの陵辱シーンまで克明に描かれます。
劇中の日本はゲノム党が支配しており、安定はしているが人民は抑圧されているというディストピア世界。M型遺伝子理論という思想で、遺伝子異常者(狂四郎もその1人)は将来犯罪者になる可能性があるとして差別が横行しています。
狂四郎の暮らす関東エリアから、ユリカが暮らす北海道中央政府電子管理センターまでは、途方もない道程が続きます。持ち場を離れて国家反逆者となった狂四郎は、追っ手、そして立ち塞がる難関を乗り越えて、ユリカの元に辿り着くことが出来るのでしょうか。
『狂四郎2030』については<『狂四郎2030』結末までの見所をネタバレ!エロだけじゃない名作を考察>で見どころを紹介しています。気になる方はこちらもご覧ください。
1位:アフリカの平和は私が守る!『ジャングルの王者 ターちゃん』
豊かなアフリカの地で密猟者と戦い、大自然を守る男がいました。彼の名は「ジャングルの王者」ターちゃん。幼い頃、サバンナに捨てられていた彼は、チンパンジーのエテ吉に育てられ、動物達と心を通わせる戦士になりました。
銃で武装した相手も素手で倒す凄腕のターちゃんですが、アフリカの大地のように広い心の持ち主。彼の下には動物達をはじめ、様々な仲間が集ってきます。妻のヂェーンに支えられながら、今日もターちゃんは彼らと共に自然の平和のために戦います。
- 著者
- 徳弘 正也
- 出版日
- 2009-10-16
本作はアニメ化もされ、徳弘正也の代名詞的作品となっています。タイトルからわかるように『ターザン』のパロディで、「ジャングルの王者」と言いつつ密林は出てきません。当初はサバンナが舞台のギャグ漫画でしたが、人気が出るにつれてバトル方面にシフトし、第7巻を境に『新ジャングルの王者ターちゃん』と改題されました。
ターちゃんの強烈なキャラクター性が本作最大の魅力です。アフリカの自然で育ったターちゃんは、チーターのように走る運動能力、犬のような嗅覚や聴覚を備えた超人。動物を会話も出来、彼らの力を真似る「動物パワー」という特殊能力も持っています。最も衝撃的なのはあそこの皮を伸ばして空を飛ぶムササビ能力でしょうか……。
脇を固めるキャラも曲者揃い。『ターザン』と言えば美女ジェーンですが、『ターちゃん』では太ったヂェーン。元々はトップモデルにまで上り詰めた金髪美女でしたが、ターちゃんとの結婚を機に自堕落な生活をしてしまい、途轍もなく太ってしまいました。非常に知的で、ターちゃんの頭脳として司令塔的に活躍します。
ターちゃんと共に戦う戦士として、自称1番弟子ペドロ、梁師範、そしてターちゃんの古い友人アナベベがいます。ペドロ、梁師範は真面目な格闘家として活躍しますが、強いのか弱いのかよくわからないアナベベはとても浮き沈みの激しいキャラです。読んでいて1番境遇が面白いのはアナベベかも知れません。
サバンナから始まったターちゃんの物語は世界、そして世代を超えて広がります。戦いを通してジャングルの王者が説くのは勿論、「平和」です。