3位:それぞれの、人生。『リアル』
「週刊ヤングジャンプ」にて1999年から不定期連載されている、車いすバスケットボールを題材にした話題作です。主人公である戸川清春、友人を半身不随にしてしまった野宮朋美、自らも車いす生活を余儀なくされる髙橋久信の3人の物語を軸にスト―リーが展開していきます。
- 著者
- 井上 雄彦
- 出版日
- 2002-09-18
「車いすバスケ」という、ともすれば重くなりがちなモチーフを使っていますが、随所に井上雄彦らしい笑いが盛り込まれています。人間味あるキャラクター達のそれぞれが「リアル」に描かれていて、感情移入しやすく読みやすい作品です。冷や汗がタラリと描かれたり、驚いた時には効果線を有効に使うなど、分かりやすい漫画的記号を多用している点も、今作が幅広く支持されている理由ではなでしょうか。
障害のある人物を描くので当然重い話もあるのですが、バスケのシーンではワクワクさせてくれたり、リハビリを頑張る姿に勇気をもらったりと、自分もその場にいるような臨場感が味わえます。主要3人物の周りを囲む人物たちにもそれぞれにエピソードがあり、それが本筋としっかり絡まってくる、骨太な作品です。
漫画はフィクションですが、現実と同じく、迷ったりくじけたりしながら懸命に生きていく人間の姿が描かれています。ちょっぴり立ち止まってしまった時におすすめです。
2位:宮本武蔵と自分の人生を、少しだけ重ねてみる『バガボンド』
吉川英治の小説『宮本武蔵』を原作とした歴史漫画で、戦国時代の末期から江戸時代への転換期を舞台に、剣豪、宮本武蔵の一生を描き出しています。1998年より「モーニング」にて連載がスタート。「バガボンド(英:vagabond)」とは、放浪者、漂泊者という意味があるそうで、まさに本作にぴったりのタイトルですね。
- 著者
- 井上 雄彦
- 出版日
- 1999-03-23
単に人気の高い宮本武蔵をテーマにした漫画でないことは確かです。天下無双を目指して剣の腕を磨き、幾多の闘いと人との出会いを通して成長していく物語は、まさに宮本武蔵の一大叙事詩といえるでしょう。強い人間を求めて斬り合う怒涛の展開は、圧倒的な筆致で描かれていて、それだけで読む価値あり。
また、人間味あふれる武蔵が魅力的なことはもちろん、武蔵の幼馴染である又八も愛すべき人物です。
幼い頃には武蔵と同じほどの剣の腕を持っていた又八ですが、酒と女を覚えて堕落し、剣から遠ざかることで開いてしまった武蔵との距離に葛藤し、嫉妬し、羨望しながらも武蔵との繋がりを切り捨てることができません。
圧倒的に真っ直ぐな武蔵と比べて、回り道をして楽な方へ流れてしまう又八は一見だらしなく思えてしまいますが、否定しきれない人間味の溢れており、つい共感してしまう人物です。又八が間違ったり迷ったり、人を羨んだりする心情は誰しも経験があるのではないでしょうか。
「ただ真っすぐに一本の道を進むのは美しい。じゃが普通はそうもいかぬもの。迷い、間違い、回り道もする。それでええ。振り返って御覧、あっちにぶつかり、こっちにぶつかり、迷いに迷ったそなたの道は、きっと誰よりも広がっている」(『バガボンド』より引用)
又八の母であるお杉がこう語るシーンがありますが、この言葉に救われる人は多いのではないでしょうか。目標に向かって進んでいても、立ち止まってしまう瞬間はあるもの。そして、それを後悔しがちです。しかし、間違っても立ち止まってもいいんだ、恥じることはない、と思わせてくれる、まさに名言です。
宮本武蔵の生涯を通して、自分自身をも見つめ直すことができる今作。一度は読んでおきたい傑作です。
1位:言わずと知れた、バスケ漫画の金字塔『SLAM DUNK(スラムダンク)』
バスケットボールが日本中を席巻した理由のひとつに挙げられる作品でしょう。1990年から1996年まで、「週刊少年ジャンプ」にて連載され、通称「スラダン」と呼ばれる不朽の名作です。1994年に小学館漫画賞少年部門を受賞、さらに2006年に文化庁が実施した「日本のメディア芸術100選」にて、マンガ部門1位を獲得するなど根強い人気を誇っています。アニメやゲームにもなったので知っている人も多いはず。
- 著者
- 井上 雄彦
- 出版日
本作は高校バスケットボールに青春をささげた熱い男たちの物語です。知らない人の方が少ないのでは?と思えるほどに多くの人に読まれ続けるバスケ漫画の金字塔。語りつくせぬほど魅力はたくさんありますが、今作の特長といえば、やはりバスケシーンのリアルさと個性豊かな登場人物たちでしょう。
長身で目つきが悪く、赤い髪の不良で、ケンカは強いけど女の子にはめっぽう弱い、見栄っ張りだけど単純で素直なムードメーカー桜木花道が、ヒロインに「バスケットはお好きですか?」と尋ねられるところから物語はスタートします。
ひと目惚れしてしまった可愛い女の子、赤木晴子にモテたいがためバスケ部に入部する花道ですが、その後の展開を読むにつけ、本当に夢中になれるものを見つけられた人というのは幸せだな、とつくづく思わせてくれます。
桜木花道といえば、やはりリバウンドですね。「リバウンドを制するものはゲームを制す」と、キャプテンの赤木と猛特訓したリバウンド。のちに「リバウンド王桜木」を自称するほどその才能は開花し、バスケを始めて4ヵ月の素人が一躍全国区にまでのし上がります。次第にバスケに夢中になり、バスケを通じて技術も人間的成長も現れ、ただの不良ではなく「バスケットマン桜木」になっていく成長の様子は、見ていてほほえましいものです。
桜木の通う湘北高校バスケットボール部の面々も、個性的で魅力的。アプローチの仕方は違うけれど、みんなバスケが大好きなんだと伝わってきます。それぞれの良いところがたっぷり描かれているので、「嫌いな人が誰もいない」状態に。それは、他校の登場人物にも同じことが言えます。気づけば、大好きなキャラクターばかりになっているのです。
さらにバスケシーンでは、試合のワクワク感、ゲームメイクの正確さ、息をもつかせぬ点の取り合いなど、現実味のある展開を用意していることで、「噓くさくない」本当の名シーンがいくつも生み出されています。
連載終了から何年経っても色あせない、バスケに恋する男子高校生の青春物語。バスケ部のバイブルとも言われる『SLAM DUNK』。何度読み返しても、また読みたくなる、自分も一緒にアツくなれるスポーツ漫画です。