緻密な絵とマニアックな趣味全開の作品を描く、森薫
県文緒(あがた ふみお)名義で高校生の頃から漫画を描き始め、同人誌活動を行っていた森薫。その後同人誌のイベントで漫画の編集者に声をかけられ、2002年に『エマ』で商業誌デビューしました。2005年にはこのデビュー作『エマ』がアニメ化され、それと同年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門の最優秀賞も獲得しています。
同人誌活動を行っていた頃からメイドを主人公に起用することが多く、作品を読んでいけば、自他ともに認めるメイド好きであることが窺えます。自身のメイド好きの趣味を全開にした作品の傾向から、連載したコミックビーム編集部では「メイドの人」と呼ばれていたそう。
メイドと言うと、男性が好みそうな趣味というイメージからか、実際読者からも本当に女性なのかと疑惑がとびかったようですが、森薫は女性の漫画家です。アニメ化された作品の公式サイトの取材漫画によると、かわいらしい笑顔の素敵な女性のようですが、打って変わって担当に対する態度は恐怖系とのこと。
作品の特徴としては、背景や衣装などの書き込みに並々ならぬこだわりを持っており、普通はアシスタントが行う作業もできる限り自身で描くようにしているというほど。小学館のゲッサンの編集長に、今まで見てきた100人を超える漫画家の中でもぶっちぎりの作画スピードを持っていると言わしめています。
「メイド漫画家」、「描き込み魔」の異名を持つユニークな女性漫画家、森薫の趣味全開の作品は、思わずうっとり、憧れてしまう美しいキャラクター、こだわりぬかれた背景や装飾品、繊細なタッチが魅力的。男女問わず楽しんでみてほしい作品ばかりです。
4位:身分の差、切ない恋の物語。森薫の商業デビュー作!『エマ』
コミックビームにて2002年から連載スタートした森薫のデビュー作。2005年、2007年にはアニメ化もされました。ヴィクトリア朝時代のイギリスを舞台に、当時の時世の光と影を描き出したストーリーとなっています。
1980年代のイギリスには、階級社会と言われるものがありました。主人公のエマは、ロンドンで隠遁生活を送る老婦人ケリーの家のメイドとして暮らす少女。ある日ケリーの教え子であり、貿易商のジョーンズ家の跡取り息子ウィリアムが訪れ、ふたりは惹かれあっていきます。しかし、階級社会によって彼らの恋には大きな障壁が立ちふさがることに……。
- 著者
- 森 薫
- 出版日
- 2002-08-30
身分の差がありながらも本気で愛し合っているふたり、という切なく苦しいテーマを起用した作品は、多くの読者の胸をわしづかみにすることとなりました。つつましく、控えめな平民のエマと、上流階級に生きながらも権力や立場を笠に着るようなことはしないウィリアム。どうしたって応援したくなる素敵なカップルである彼らが悩み葛藤する姿には、ギュッと胸が締め付けられることでしょう。
このふたりの恋の物語を通して、ヴィクトリア朝時代のイギリスにおける階級社会の光と影が浮き彫りにされてゆきます。恋の物語でありながら、時世が背景に存在することで、より一層作品に深みがでており、そこがまたこの『エマ』の魅力なのです。
主人公のエマのキャラクター設定にもメイドに対する熱い思いが込められています。美人、無口、メガネ、照れ屋の4つの要素は、森薫曰く最強の四段設定。趣味全開でこだわり抜かれたキャラクターもこの作品の大きな魅力です。
階級社会に生きるふたりの恋の行方をドキドキしながら、そして時に胸をしめつけられながら、読んでみてください。
3位:趣味全開!凝縮された濃い世界観が見どころ『森薫拾遺集』
森薫の短編作品を約120ページ収録し、連載の間にこつこつ書き溜めていたというイラスト、サイン会のイベント情報ペーパーなどを約80ページも収録した森薫の魅力を凝縮したような1冊。デビュー10周年を迎えた「森薫の好きなもの」が詰まったファン必見の作品となっています。
- 著者
- 森 薫
- 出版日
- 2012-02-15
この作品には漫画家・森薫の好きなものが、むせ返るほどに詰まっています。メイド、バニー、メガネっ娘、とにかく美女に対する愛情がこれでもかというほどに。一種のフェティシズムをひしひしと感じさせるほどのこだわり、いや、執着と言っても良いくらいの愛情を感じさせます。
描き込み魔とも呼ばれる森薫の細部にまでこだわり描き込みに描き込んだ、作品の背景にあたる部分。人物が重視されてしまいがちですが、描き込まれたちょっとしたパーツでストーリーや主人公、森薫の好きなものがグッと引き立たつのです。
今回は「見えるようになったこと」という作品をご紹介します。
主人公の女の子は中学2年生。森薫の描くふっくらとしたセクシーな女性ではなく、こちらはまだまだ子どもらしい可愛さが全開です。そんな主人公、視力が落ちて黒板は見えない、成績は落ちる、やる気もなくなってしまいます。だからメガネをかけることに。すると世界が変わったようによく見える!遠くのものも、見えなかった黒板の字も、最近よく嶋田君と目があっていることも。……え!?
8ページほどの短編ですが、にやにやと笑みがこぼれる展開についついのめり込んでしまうことでしょう。森薫のメガネっ娘に対するこだわりも相当なものだとうかがえる画力と描き込み具合も必見です。どこを開いてみても森薫!濃厚で密な作品をぜひ一度読んでみてください。