3位:度を越した野球バカたちの共演!
『男どアホウ甲子園』は変化球を嫌いストレート一本に賭ける主人公が、女房役の相棒とともに甲子園優勝、そしてその後の阪神タイガース入団を目指す物語です。「魔球」や「必殺打法」などが登場する、実に漫画らしいフィクションが織り交ぜられた作品となっています。
ストレートしか投げない豪腕投手、その名も藤村甲子園は、相棒の岩風五郎(豆タン)を女房役として甲子園制覇を目指している少年です。数々の敵を打ち倒し、後にプロ入り、最終回では阪神タイガースに入団した甲子園が長嶋茂雄と対戦するシーンが描かれます。
- 著者
- 水島 新司
- 出版日
本作は「魔球」や「必殺打法」を駆使し、数々のライバルキャラとの死闘が展開されるエンターテイメント性の高い作品となっています。登場するキャラクターたちは、そんな作品に色を添える個性の塊と言える人物ばかり。
孫の出生届を出す際に勝手に名前を書き換えた甲子園の祖父や、幼いころの抗争で右目と右腕を失ったライバルキャラ丹波左文字など、濃いキャラクターが続々登場します。作中には常識外れな描写も多く、ルール上ただのボークにしかならないような「魔球」なども堂々と描かれています。メインヒロインが登場するお話にはちょっとしたサービスシーンもあったりと、良い意味で娯楽に特化した野球漫画と言えるでしょう。
『ドカベン』で人気を博した水島新司ですが、その2年前にはこんな面白い作品を描いていたんです。作風も対照的ですし、隠れた名作といった位置づけができる本作品。古き良き時代を感じさせてくれる勢いのある作品ですので是非読んでみてください。
2位:野球史上初の美人ピッチャーが登場
『野球狂の詩』は投げては打たれ続けるよれよれの50歳投手と、野球界初の女性投手などを中心にした、「野球狂い」たちの奮闘を描く連作。一旦は完結するも、その後読み切りなどで続編が描かれたりと、関連作品全体の経緯を見ると、わりと息が長い作品となっています。
プロ野球セ・リーグに所属する球団、東京メッツ。負け越しに負け越しを続け低迷を続けていた万年最下位の球団に満を持して迎え入れられた若手投手は、なんと女の子でした。東京メッツで50歳を超えながらも現役で投げ続ける投手、岩田鉄五郎がしつこく推薦したこともあり彼女はメッツ入団が決まります。こうして野球史上初の女性投手が生まれるのです。この美人投手の水原勇気や、よれよれの老齢投手岩田鉄五郎などの「野球狂い」たちにスポットを当てて物語が展開されていきます。
- 著者
- 水島 新司
- 出版日
まず目を引くのは野球漫画の主人公とは思えないほどよれよれの投手、岩田鉄五郎の姿です。野球漫画と言えば若者の青春や、青年となった彼らの活躍を描く、夢と希望に満ちあふれたイメージがありますが、本作品には、鉄五郎をはじめとする「野球狂い」たちを主人公とした、決して明るいとは言えない現実的なお話が描いてあります。
女性投手、水原勇気のエピソードこそ明るいものですが、岩田鉄五郎のような現実的な悩みを抱えた、陰りのあるキャラクターがたくさん登場する作品でもあるのです。どんな人物がどんな「野球狂い」っぷりを見せるのか、それを楽しみに読んで頂きたい作品となっています。
ちなみに女性ピッチャーということで人気を得た本作品は、映画版とドラマ版で2度も実写化されています。この女性投手という主役がいかに世間の注目を浴びたかを物語っているものです。
水原勇気編では、彼女がいかにしてプロ野球選手となったか、女性である彼女がプロとして通用するためにはどうすればいいのかなどが描かれています。最終的にはドリームボールという「魔球」を投げるようになる彼女を中心に、その魔球を打つことに選手生命をかける人物が登場するなど、現実味のある作風から、遊びの要素の強い作品へとなっていきます。水島勇気という魅力的なキャラクターが描きだすこんな部分も、本作品の大きな魅力と言えるでしょう。
ここで紹介した人物以外にも様々な野球狂いが登場していますので、実際に見て楽しんで頂きたいです。中にはあり得ないだろうとツッコミたくなるようなとんでもない人物も登場しています。当時だからできた作風かもしれませんね。
1位:野球漫画の巨塔。水島新司の壮大な青春ストーリー
『ドカベン』は言わずと知れた水島新司の代表作。当時の野球漫画にはなかった、投手と打者の頭脳戦のような描写を入れ、リアルで戦略性のある野球を描いています。ドカベンこと山田太郎とそのチームメイトたちが、高校野球を舞台に奮闘していく姿を描いている物語です。
ずんぐり体型のキャッチャー山田太郎、通称ドカベン。土方弁当(アルマイト製の大きな弁当箱)がそのあだ名の由来です。その彼と、口に葉っぱを咥えている姿が特徴的な岩鬼正美、エースの里中智などを中心にした、明訓高校野球部の面々が甲子園制覇を目指していく物語です。
冒頭でも解説した通り、非現実的な表現が多かった既存の野球漫画作品に比べ、配球の読みや球児同士の心理戦のようなシーンが描かれたりと、野球漫画の新境地を開いた作品としても知られています。
- 著者
- 水島 新司
- 出版日
まずは有名な話ですが、物語序盤のドカベンたちの中学時代は、なんと野球漫画ではなく柔道漫画として描かれています。表紙も柔道着を着た登場人物たちばかり。とても野球漫画とは思えません。単行本7巻目からようやく野球漫画へと移るわけですが、これには、ライバル誌で別の野球漫画を連載していたためという理由があります。
しかし最初から野球漫画を描くつもりはあったようで、野球のエッセンスを感じさせつつ物語が展開していきます。後に柔道時代のライバルが野球でも登場してくるあたりも、ひょっとしたら計算ずくだったのかもしれません。
登場するキャラクターは多種多様。家族の絆なども描く濃厚なストーリーですが、特に見て頂きたいのはやはり、球児たちの絆です。気は優しくて力持ちというキャラを地でいくような山田太郎。彼が、岩鬼をはじめ様々な人物が起こすトラブルを巧みに解決に導いていく姿は実に面白く、時には涙を誘う感動的なエピソードなども描かれます。こういった野球漫画では、描かれるべき青春模様が根幹を成すことが、王道ではあるけれど好きにならずにはいられない物語をつくっています。
そして『ドカベン』を語るうえで忘れてはならないのが最終回のエピソードです。一般的な野球漫画ですと、高校野球の場合、甲子園に優勝もしくは敗北してそれぞれの想いに決着をつけるようなお話が多いかと思います。本作品でもそのように最終回まで物語が展開しますが、問題は甲子園が終わった後に衝撃的な展開が待っているということです。
当時の読者は本当にびっくりしたようで、ファンの間では今でも語り草となっているほど。どういった内容かはここで明かしてしまっては勿体無いのであえて明かしません。どんな衝撃的な展開なのかはご自分の目で確かめてみてください。
そんな最終回を迎えた後、同作者によって『ドカベン』の続編とも言える『大甲子園』が描かれます。この作品は他作品の登場人物がクロスオーバーする作品なのですが、ドカベンこと山田太郎とエース里中の友情を中心に描くストーリー構成となっており、あの最終回があったからこそ感動できる、本当に意味を成す続編として仕上げられています。
感動の高校野球編は、本作品と続編をあわせて単行本全74巻という一代巨編となります。しかもその後も『ドカベンプロ野球編』につづいていきますので、すべてを読み切ろうと思ったら大変です。しかしそれだけの時間を費やすだけの価値はきっとあります。どんな物語なのか、本作品の最終回とあわせてお楽しみ頂ければと思います。