ベンチャー企業の夢と現実
『東京トイボックス』 構成比:夢60%、現実40%
【2話まで読んで判断に迷った人は8話まで読むべし!】
秋葉原の弱小ゲーム制作会社スタジオG3の社長天川太陽は面白いゲームを作ることを優先し過ぎるあまり、経営をおろそかにしていました。
大手町の大企業に勤める優秀なキャリアウーマン月山星乃は、優秀過ぎるがゆえに上司の策略にはめられ、スタジオG3に出向することになりました。
面白いゲームを作ることを目指す天川は、経営を健全化しようとする月山と対立することになり……。
- 著者
- うめ
- 出版日
- 2007-09-22
ゲームを題材にしたマンガですが、仕事を題材にしたマンガとして読むこともできます。
「納期を守らせるのはあんたの仕事だ
だが オレの仕事はおもしろいゲームをつくること」
(『東京トイボックス』1巻より引用)
子どもみたいな理屈を展開し、勢いのまま押し切っていく天川。天川の熱量に強行突破される月山。物語が進むにつれて名コンビとなっていくふたりですが、初期はまったくかみ合っていませんでした。
理想を追い求める天川と現実を提示する月山はどちらも間違ってはいないでしょう。どちらに共感できるかという問題はあるかと思いますが、どちらも正しいことを言っています。
夢を追い求めないのであれば苦労してベンチャーをする意味はないし、利益が出なければ現実問題続けていくことはできません。
夢と現実というのは対立しがちなものですが、そのふたつがうまく組み合わさった時にこそ面白いものが生まれるのではないでしょうか。本作はそんなベンチャー企業の青春を描いた作品です。
1話、2話で面白いと感じた人はそのまま読んでください。ちょっと判断がつかないなと思った人は8話まで頑張って読んでください。本作が気に入った方は続編の『大東京トイボックス』もほぼ確実に楽しめるはずです。胸が熱くなるベンチャーマンガの傑作を是非。
臓器売買を巡るクライムマンガ
『ギフト±』 構成比:臓器売買60%、ミステリー20%、エロ10%、グロ10%
【2話まで読むべし!】
主人公の女子高生鈴原環(すずはらたまき)は解体のプロフェッショナルです。解体と言ってもマグロなどの解体ではなく、人間の解体を専門としています。
環は大学生のタカシと組み、生きる価値がないと判断した犯罪者を生きたまま解体し、臓器移植を行っていましたが、彼らにチャイニーズマフィアや警察の手が迫り……。
- 著者
- ナガテ ユカ
- 出版日
- 2015-07-18
絶えず謎を提示し、キャラクターをピンチに追い込むことで、引きの強いエンタメ作品に仕上がっています。先が気になるエンタメとしての基本を抑えながら、テーマも明確に伝えてくるところは他のクライムものと一線を画している点でしょう。
かなりエッジの効いた作品になりますので、読む人を選ぶという面はあるかと思います。
民間人が勝手に人を殺してはいけないという意見もあるでしょうしその通りだと思いますが、たとえば、死刑囚の臓器を移植臓器として扱うというのであればどうでしょう。そもそも死刑制度に反対という人もいるでしょうが、自分にとって大切な人がドナーを待っているという状況であれば感情的には賛成という人もいるのではないでしょうか。
また、様々なファクトを示すことで、リアリティを増していることも本作の成功要因のひとつです。透析患者が30万人を突破し、年間で透析にかかる費用は1.5兆円かかっているというファクトから臓器移植の普及を政府が推進する可能性を示唆するなど、極めて真面目に臓器移植について描いています。単なるエログロクライムマンガではありません。
2017年3月現在、移植希望登録者は約14000人。対して、移植件数は2016年の1年間で338件です。圧倒的にドナーが不足しており、何らかのイノベーションが起こらない限り、状況は改善されないでしょう。本作が描かれた背景にはどうにもならない現実があります。
環による解体シーンは少々グロさがあるため、耐性のない方には厳しいかもしれませんが、グロイものでも大丈夫という方には是非とも読んでいただきたい作品です。
社会派ラブコメの傑作
『中卒労働者から始める高校生活』 構成比:恋愛40%、コメディ20%、コンプレックス20%、社会課題15%、トラウマ5%
【4話まで読むべし!】
主人公の片桐真実(かたぎりまこと)は、母親が他界、父親は服役中という状況だったため、中学を卒業してすぐ工場で働いていました。
妹の真彩を不自由なく進学させようと奮闘していた真実でしたが、真彩は高校受験に失敗してしまいます。
そんな真彩が担任から提案されたのは通信制高校。週に1回の通学でも4年で卒業可能だと知り、真実も真彩と一緒に入学することになります。
シングルマザーや76歳のおじいちゃんなど、様々なタイプの人とクラスメイトになったふたりですが、その中でも、見るからに育ちのいいお嬢様の逢沢莉央が一際浮いていて……。
- 著者
- 佐々木ミノル
- 出版日
- 2013-05-29
「社会派ラブコメ」と書きましたが、肩ひじ張らず、普通のラブコメだと思って楽しめる作品です。通信制高校という舞台設定や様々な背景を持つキャラクターの生き方など、社会派な側面はもちろんありますが、重くなり過ぎずに純粋にラブコメマンガとして楽しめるというのが本作最大の美点でしょう。エンタメとしての面白さを確保して、テーマを自然に織り込むことに成功しています。
中卒、通信制高校といった設定以外はスタンダードな学園ラブコメなのですが、おそらくあえてスタンダードから外した表現を採用しているところもあります。たとえば、ラブコメ作品における見せ場のひとつ、告白シーンでは、溜めのコマが存在しません。通常、キャラクターの内面描写を盛り上がっていったり、何らかの伏線を張ったりして告白シーンを見せ場にするわけですが、本作は何の前触れもなくいきなり来ます。ほとんどの人は予想できないでしょう。賛否が分かれるところかもしれませんが、個人的には圧倒的に賛です。衝撃を受けました。
面白い学園ラブコメとしても、社会派マンガとしても是非とも読んでいただきたい作品です。