シュールな絵柄と独特のセンスで描かれる押切蓮介の作品は、どれも個性的。ホラーギャグを中心に描かれる物語の数々は、押切にしか出せない味わいに満ちています。具体的にどんな味の作品なのでしょう。今回は押切作品をランキング形式でご紹介していきます。

「俺クオリティ」。彼が、自分ばかりが不幸な目にあうことを自虐的に語る言葉です。ちょっとネガティブな思考を持った方なら誰でもこういった考え方をするのかもしれませんが、彼の場合はそれに輪をかけて自虐的。作中で綴られている押切の半生は、まさに彼ならではのクオリティといえるほど陰鬱な雰囲気をただよわせています。
- 著者
- 押切蓮介
- 出版日
- 2009-10-16
押切作品ではもはや定番となった、「黒髪ロングの美少女」の原型ともいえるキャラクター日野留渦と、その妹を溺愛する兄耳雄の兄妹関係が魅力的なこの物語。日常で起こるあるあるネタが、実は妖怪の仕業だったという基本的な骨組みと、それを耳雄が暴力で解決していくというわりと王道のスタイルで出来上がっている作品です。『週刊ヤングマガジン』で連載されていましたが、下ネタギャグなども多く、どちらかと言うと低年齢向けともいえる内容ですが、作風とあいまって怖い描写も多いので完全に低年齢向けとはいえません。難しく考えず読める漫画、ということです。
- 著者
- 押切 蓮介
- 出版日
- 2013-12-25
著者の持ち味であるホラーギャグとは少々趣きがちがい、同著者の他作品に比べるとやや猟奇的な要素などが多い、正統派のホラーともとれる本作品。少年漫画らしくバトル要素などを加え、気弱だった主人公が成長し強くなっていく姿も描かれています。当初シュールギャグといえる内容だったものが路線変更され、ホラーアクション作品としての形を成しました。激しいアクションシーンなどを他の漫画家から称賛されるなど、著者の新しい才能を覚醒させた作品でもあります。そのバトルシーンには猟奇的な表現も多く、ホラーテイストの本作品の世界をさらに恐ろしげなものへと際立たせています。
- 著者
- 押切 蓮介
- 出版日
- 2007-07-06
この記事を読んでいる方の世代は様々でしょうし、ゲームなんてわからないよと思っている方もいらっしゃるでしょう。しかし本作品に描かれているのはゲームの中身のお話ではないのです。子どもの頃だれにでもあった「子どものころに夢中だったもの」のお話なのです。秘密基地やあの頃の親友、大人になって帰ってきた故郷など、ノスタルジックな雰囲気を味あわせてくれるキーワードに溢れたこの物語は、誰もが共感できる、幼少のころを思い出させてくれる良作に仕上がっています。
- 著者
- 押切 蓮介
- 出版日
- 2009-09-17
しかしハルオは、卑怯な手段を使われたことに怒った晶にボコボコにされてしまい、行きつけだったゲーセンから出入り禁止を言い渡されてしまうのです。こうしてふたりは出会い、この時からふたりの、ゲームを通じた奇妙な因縁が始まって……。
作中には実際に発売されたゲームが数多く登場し、そのプレイ画面やゲームの登場人物なども引用されています。1990年代当時の対戦型格闘ゲームブームを知る読者には、当時を振り返ることができる回想録としても楽しむことができるでしょう。
- 著者
- 押切 蓮介
- 出版日
- 2016-07-25
著者の少年時代を描く『ピコピコ少年』が、読者にノスタルジーを感じさせる普遍的なテーマを持った作品だったのに対し、こちらはまさにゲーム世代をピンポイントに捉え、共感を与えてくれる、特殊な作品といえます。ちなみに、作中には『ピコピコ少年』の主人公である著者の少年時代、神崎少年が、ところどころにモブキャラクター(話には直接的な影響を与えないキャラクラー)として登場しています。漫画を読みながら彼を探してみるのも楽しそうですね。
前述した本作品を巡る著作権問題に関してですが、押切蓮介を語る上で必ず話題にあがるようになってしまった出来事で、現実で最大の「俺クオリティ」を発現してしまった事柄であるといえるのが悲しいところです。作中でSNKプレイモアが所有する著作権物を無断使用したということで始まった騒動。これにより本作品は一旦は連載休止となってしまいますが、SNKとの和解成立により2016年より連載が再開されました。
さて、不本意ながらも抜群の話題性を獲得してしまった作品ですが、そんな話題性は抜きにしてもかなりの良作品です。ホラーギャグを好んで描きながらも、多彩なジャンルの作品を世に出す押切が、ラブコメディに挑戦した本作品。第一印象が最悪だったふたりが、小中高と年齢を重ねながら徐々に距離を縮めていく恋模様は、失礼ながらこの著者にしては意外にも感動的な内容なのです。ゲームを知らなくても楽しめますし、知っているならプラスαで楽しめます。是非読んでみてください。
そしてそれを皮切りに、家族が次々とおかしな現象に巻き込まれ命を落としていきます。戦慄し、やがて「何か恐ろしいもの」が存在することを感じ始めた主人公でしたが、そんな時ボケていたはずの祖母が突然正気に戻り、昔の気丈な性格も戻ります。彼女は孫とともに、この家に巣食う「恐ろしいもの」へと復讐を始めることを誓うのです。
新しい家に住み始めた家族を様々な怪異が襲うというのは、ホラー映画などでは定番のシチュエーションです。しかも犠牲になってしまうのは大抵主人公の身近な人たちですから、作品の雰囲気としては陰鬱にならざるを得ません。作中で主人公則雄の家族が次々に犠牲になっていく様は、まさにホラーです。
- 著者
- 押切 蓮介
- 出版日
- 2015-12-24
しかし前半の展開を前フリだと言わんばかりに、後半では怒涛の復讐劇が始まります。最初の展開を乗り切りさえすれば、あとは化け物退治を行う「ばあちゃん」の無双劇が楽しめるわけです。本作品の重点がここに置いてあると理解できれば、前半の家族の不幸もそれほど後をひくこともなく、ホラー作品でありながらも痛快なストーリーを楽しめるかもしれません。
とはいえ、やはり押切作品。スッキリ痛快というわけにはいきません。本作品の要となるこの「ばあちゃん」というキャラクターは強烈です。最初はボケていたのに、正気に戻り往年の気迫を取り戻してからの彼女には鬼気迫るものがあります。話が進むと、神木家を苦しめた怪異の正体はある少女の怨霊であることが判明するのですが、家族の復讐を誓ったばあちゃんは、彼女の家族を拉致したり、拷問したりして彼女を追いつめるのです。こうやってあえて冷酷な行いをして手を汚すのにもばあちゃんなりの理由があるのですが、見てる側としては異様な恐怖を感じてしまいます。
押切蓮介らしいホラーな表現で描かれる家族愛ですが、それは不幸な目にあっていく神木家だけの話ではなく、怨霊となった少女とその家族の話でもあります。彼女のような、善悪で言うところの「悪」の存在にも、何かしらの深い理由があり、それが悲しみと恐怖を生み出しているという表現の仕方は、日本製ホラー独特のものといえるかもしれませんね。作中に登場する善と悪、ふたつの家族の結末がどうなるか、それは作品を読んでからのお楽しみです。ぜひご一読を。
カタコトの言葉で会話をすることもできるポーちゃんは、不思議な力を使い若葉にいろいろなものを見せてくれます。そんな押切らしい独特の霊の世界を見せてくれるこの物語では、恐ろしげな霊の世界を見せつけるだけでなく、若葉とポーちゃんの触れ合いを中心に、心暖まるストーリーが展開されていくのです。読者を選ぶといわれる押切作品の中で、ひときわ明るい表情をした作品だといえます。
- 著者
- 押切 蓮介
- 出版日
- 2012-02-01
本作品は母親というものの存在感を強く、そして大きく感じさせてくれる傑作です。そして同時に、母親を想う息子の、照れくさくも正直な感情を垣間見ることができる作品でもあります。ふざけ半分に語りながらも本心ではやはり母を想わずにいられない、これこそ人情(心の動き)だといえる、作者自身の本音が語られているのです。これはもう、母と子ふたりの自伝と言い換えてもいいのではないでしょうか。
- 著者
- 押切 蓮介
- 出版日
- 2016-01-22
- 著者
- 押切 蓮介
- 出版日
- 2012-02-28
戦時下という殺伐とした世界でありながら、クロのあまりの強さがギャグにも見えてしまう本作品は、押切の持ち味であるホラーギャグの要素を盛り込みつつも、クロを中心とした常人離れした登場人物たちのバトルシーンを前面に押し出した作品です。無類のゲーム好きを公言する作者らしく、格闘ゲームのキャラクターばりに戦車や戦闘機を素手で破壊するクロの最強っぷりは見応え充分。いきすぎた強さは突っ込まずにはいられないほど激しく、ド派手です。最終巻ではコマ割りされたページを少なくし、迫力のある彼のバトルシーンをページまるごとを使い演出しており、圧巻の出来栄えになっています。
クロのバトルシーンで読者を沸かせつつ、荒れ果てた時代を沙羅が懸命に生きる姿もしっかりと描いてあり、少女と野獣両方の姿を見せてくれる本作。ふたりの触れ合いは、ヒューマンドラマとしても楽しむことができます。差別や偏見の目で見られ虐げられてきた少女が、精神的にも肉体的にも強く成長していく姿は感動的で、クロとの関係も含めて考えると、ちょっとした恋愛漫画かも?というような印象も与えてくれる良質の物語となっています。
数々のジャンルに挑戦し、そのどれもが独特のタッチで描かれる押切ワールド。ここでもバトルヒューマンギャグドラマと呼べる個性的な作品を描いています。多彩な表現方法を持った彼が描き出す世界は驚くほど広く、個性豊かです。まずはこの作品を読んで、押切ワールドの世界へ一歩足を踏み入れてみませんか?
- 著者
- 押切 蓮介
- 出版日
名作映画『キャリー』(アメリカのホラー映画)を彷彿とさせるストーリー構成の本作品は、押切作品では初となる、人の恐ろしさを描いた作品です。本当に怖いのは人間なのだと様々な作品で語られるように、本作品の中にも人間の手による恐ろしい行いがありありと描かれています。
少女をいじめ抜き、家族さえも奪ってしまう非道のいじめっ子たちも恐ろしいですが、深い悲しみと恐怖にとらわれた少女の姿は、さらにとてつもない恐ろしさです。「少女」を扱ったホラー作品では、他に得難い究極の恐怖が刻まれることがあります。過去、ジャンルを問わず数々の作品で描かれてきた「少女」の恐ろしさは、本来は愛くるしい存在であるはずの少女が、深い闇に落ちてしまうことから感じ取れるものなのでしょうか……。とにかく恐ろしい作品なのです。不気味な世界とシュールな表現力により数々のホラーギャグを生み出してきた押切ですが、本作品では持ち味であるギャグ要素を排除し、読者からは「黒押切」などと言われ賛否を呼んでいます。
あまりに残酷な仕打ちを受ける少女は悲哀に満ちており、それを行ういじめっ子たちも、人間の生み出す恐怖を体現しています。物語における彼らの立ち位置は、本来ならば妖怪や霊などが収まる場所。人ではない未知の存在だからこそ生まれる恐怖がそこにはあるのでしょう。しかし本作品では、その場所に人が収まっているのです。身近な存在で仲間であるはずの「人」が恐怖の対象となることで、そこには計り知れない憎悪と、生々しい現実感が生まれます。押切は本作品で見事にその生々しい恐怖を描き切っているのです。
耐性の無い人には苦痛でしかないでしょうが、耐えられそうな方は読んでみてください。デビュー当初から培ってきたシュールなギャグ要素を排除してまで書き上げた作者の魂のこもった快作です。傑作サイコホラーの恐怖を存分に味わってださい。
『ミスミソウ』については<『ミスミソウ』の見所を最終回までネタバレ紹介!傑作ホラー漫画の鬱展開…>で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
こうして紹介してくると、押切蓮介の作品には妖怪や霊、未知の何かなどを強引にぶっ飛ばす内容の作品が多いようです。登場人物には薄幸の少女などが多いですし、どうしようもない理不尽な不幸を、圧倒的な力を使い強引に吹き飛ばしたい、そんな思いが作者にはあるのかもしれませんね。決して万人向けとはいえない押切ワールドですが、少しでも惹かれる何かがあったのなら、手にとって見ることをおすすめします。彼の漫画は面白いですよ、本当に。