3位:諸星大二郎のベストコレクション的短編集「彼方より」
第3位は『彼方よりー諸星大二郎自選短編集』。タイトル通り、諸星自身が選んだ短編作品を収録したベストコレクション的1冊。ラインナップは諸星大二郎の魅力の詰まった作品ばかりです。
- 著者
- 諸星 大二郎
- 出版日
- 2004-11-01
新人とは思えない素晴らしい出来であったために、盗作なのではと疑惑が飛び交った『生物都市』を含めた10作品を収録した短編集。往年のファンから見ても納得のラインナップで、諸星大二郎の世界観を楽しめる作品です。
彼の持ち味、特徴、魅力がこれでもかと詰まった短編の収録された1冊となっていますが、初めて諸星大二郎作品を読む方には、もう一冊の短編集、『汝 神になれ 鬼になれ』を先に読んでから読むことをおすすめしたい作品でもあります。
『汝 神になれ 鬼になれ』は、『妖怪ハンター』や4位で紹介した『栞と紙魚子』などの作品から集められた、諸星大二郎の代表作が抑えられた短編集となっているので、初めて読んでもわかりやすく読みやすい作品です。『汝 神になれ 鬼になれ』で諸星大二郎の世界を知ってから『彼方よりー諸星大二郎自選短編集』を読むことで、より一層彼の作り出す歪んだ不可思議な世界観は楽しむことができるでしょう。
『彼方よりー諸星大二郎自選短編集』に収録されている手塚賞に入選した「生物都市」は、198X年に木星の衛星イオ帰還した宇宙船が謎の怪現象をもたらすというストーリーです。帰還した宇宙船の周囲から広がっていくのは、人間や動物たちが機械に次々溶け込んで融合しているという不気味な情景……。
拡大を進める怪現象、機械と融合していく描写はトラウマ級の衝撃と印象で脳裏に焼き付きます。それに反する主人公の少年の無邪気さと入り交じり、一言では説明できない不思議で異様な世界を生み出しています。
卓越した描写で描かれるカオスな世界。漫画と侮ることなかれ。ちょっとした短編SF小説を読んだような読了感が待っているはずです。読み終わったころには、諸星大二郎の世界が脳内にコラージュされているかのように焼き付いているでしょう。
2位:複雑に入り乱れた難解なテーマ『暗黒神話』
ヤマトタケル伝説を中心に、古代日本の神話、遺跡、仏教、呪術やSF的な要素が盛り込まれた作品。主人公の少年が辿ることとなる、数奇な運命の物語です。
- 著者
- 諸星 大二郎
- 出版日
- 1996-11-01
中学生の少年、武が、自身の父の死の真相を知り、予想もしていなかった数奇な運命を辿ってゆくことになるというストーリー。しかし、これはあくまで物語の始まりでしかありません。どんどん複雑に入り組み、難解な謎に突き詰められてゆきます。一体次はどう展開するのか、謎の答えは?と先が気になって仕方がないほどに引き込まれること必至です。
非常に難解なテーマを起用し、神話や伝説、宗教や遺跡などの、表には見えない裏側に潜むものにスポットライトをあて、諸星大二郎独自の視点で神秘的な世界観を生み出しています。壮大なスケールで描かれる物語の、一口には説明できない入り組んだ難しいストーリーも魅力。読み進めていくうち、歴史や神話、伝承などに対する知識欲が刺激される作品です。
諸星大二郎独特の生暖かさのある絵のタッチで、より一層物語の不気味で暗い部分、怖さも引き立てられ、彼にしか出せない味を出しています。諸星大二郎の世界観を存分に堪能できる素晴らしい作品、登場人物たちとともに謎を追ってみてはいかがでしょうか?
1位:奇才、諸星大二郎初の連載作『妖怪ハンター』
諸星大二郎初の連載作品。新進気鋭の考古学者として名高い稗田礼二郎が、古墳や歴史の裏側に潜む謎にスポットライトをあて、解き明かしてゆくという物語です。
- 著者
- 諸星 大二郎
- 出版日
- 2005-11-18
もとK大の考古学教授にして、新進気鋭の考古学者として有名な稗田礼二郎は、不可思議な事例や奇怪な題材ばかりを研究していたために、学会からは異端扱いされていました。そんな稗田はフィールドワークとして日本各地を訪れ、その地に眠る歴史の裏側に隠された超次元的で超自然的な不思議を解き明かしてゆくうち、怪奇現象に巻き込まれてゆきます。
基本は1話完結でテンポよく展開してゆきますが、時折大きなテーマを複数話かけて進めることも。タイトルには妖怪というワードが入っていますが、妖怪らしい妖怪はほとんど出てくることはありません。出たとしても、稗田礼二郎はあくまでも、研究者です。捕獲する、退治するようなこともないのです。
どこか薄気味悪い雰囲気の漂う描写は、本来はリアルではないはずなのに、触れれば温度や質感を感じるのではないかと思うほどにリアル。思わず引き込まれてゆくことでしょう。怪奇作品好きならいきなりハマる、といっても過言ではありません。2位の『暗黒神話』にもある要素ですが、こちらも歴史や神秘的なその裏側をより深く知りたくなる、知識欲まで満たされてゆく作品です。
諸星大二郎作品なら、まずこれを読んでみるのがいいでしょう。