3位:自腹×オノマトペで伝わる美味しさ
『おしゃべりは、朝ごはんのあとで。』この作品はBLではなく、秀良子自身が自腹で美味しい朝ご飯を食べるべく東奔西走するコミックエッセイです。
TVのバラエティ番組の様に勝負に負けたら自腹ではなく、最初から自腹ありきの企画です。普通はそう言った企画なら近場で美味しいものを探そうとすると思います。しかし秀良子は違いました。1回目から自腹でフランスはパリに朝ごはんを食べに行っています。
ラデュレでの朝食では同行した友人が食べているフレンチトーストを口にして
「じゅんわり ふんわり もっちり…」
(『おしゃべりは、朝ごはんのあとで。』より引用)
- 著者
- 秀 良子
- 出版日
- 2013-09-30
感想を全てオノマトペ(擬音語)で表していますが、読んでいるこちらにもきちんと伝わってきます。ああ…美味しそう…と読みながらお腹が減ってきます。
2巻になるとオールオノマトペではなく、しっかりした食レポになっていくのも読んでいて楽しいところのひとつです。食レポがしっかりしていくなか、美味しさのあまりまた語彙力が下がってオノマトペが出てくると「それだけ美味しいんだな」と判断できて面白いです。
食べ物だけではなく、その取材先の人々が醸し出す空気感をも味わえる作品となっています。
2位:金曜日はカレーの日
主人公の松田夏樹は大学2年生。付き合っていた年上営業マンが結婚するからと振られたところから物語は始まります。
夏樹は1学年下のコマノからカレー部に入らないかと誘われます。最初女性だと間違って声をかけたコマノですが、なんだかんだと夏樹に付きまとうようになります。そんな時、大学までやってきた件の営業マンとの痴話げんかをコマノに目撃されました。
しかし、そこでコマノは引くこともなく、逆に深くつっこんでくる訳でもなく今まで通りに接してきます。夏樹にしてみたら今まで身近にいなかった種類の人間です。
- 著者
- 秀 良子
- 出版日
- 2011-02-20
さて、夏樹の性的指向は幼い時から男性に向かっていました。そのことで、からかわれたり陰口をたたかれたりしています。
小中学校で疲れた彼は県外の高校へ進学するも好きになった同級生を3年間眺め後悔し、大学で好きになった人はカワイイ女子にもっていかれ最終的には
「しばらくして俺はネットで知り合った10歳上の営業マンにすべてをささげた
はじめて男に恋愛対象として扱われて
手足がしびれた」
(『リンゴに蜂蜜』より引用)
という恋愛をした結果、その営業マンは結婚するけど付き合ってくれとか言ってくる始末です。そんな営業マンとのことを吹っ切らせてくれたコマノ。
自分が作るリンゴと蜂蜜が入ったカレーは甘くて美味しいとコマノは言います。だから今度は夏樹がコマノと一緒に笑顔でカレーを食べられることを願いつつ、是非続編の『彼のバラ色の人生』を読んでいただきたいなと思います。
1位:愛されワンピで初めて恋を知る
学校では俗に言うリア充グループに属している八代が女装をして繁華街の雑踏で立っているところを、百瀬が見つけます。
「骨ばった肩で男だと気づいた
顔をみて八代(クラスメイト)だと気づいた」
(『宇田川町で待っててよ』より引用)
何故八代が女装をしているのかと色々考える百瀬ですが同時に八代に対して、制服を持ってきたり付き合おうと言ったりと行動が非常にストーカーっぽい……。しかし女装した八代のことをすんなりと受け入れて更に「カワイイ」と言ってのける大物とも言えますね。
八代が女装を始めたきっかけは半年程前に付き合っていた彼女に女装させられたことでした。そこから女性用ファッション誌を読んだり、通販で服を購入したり……。百瀬にバレたことで「やめよう」と思うのにやめれないところまで八代は女装から抜け出せなくなっていて……。
- 著者
- 秀良子
- 出版日
- 2012-10-25
スクールカースト上位にいる八代と下位で陰キャラで何を考えているのか解らない百瀬。好みも何もかもが違って八代が女装をしていることさえ知らなければ、きっとただのクラスメイトで終わっただろう2人の青春ラブストーリー。
2位と4位で紹介した『リンゴに蜂蜜』『彼のバラ色の人生』の夏樹がゲイであると最初から提示されているのに比べると、この2人はただの男子高生です。ちょっと元カノが頭がゆるかったせいで女装に目覚めてしまった八代と、八代の存在を眩しく思っていた百瀬。どちらも最初から男性に性的指向があったわけではありません。
だからこそ気になっても認めたくない、認めたくないけれど自分が求めているものが何なのか解ってしまっている八代の葛藤はリアルに感じます。このリアルさとBL特有のファンタジーっぽさの匙加減が絶妙で独特の空気感を生み出しています。
空気感を生み出す作家、秀良子の代表作。この機会に是非読んでみてはいかがでしょうか。