3位: おかざき真里が描き出す、仏教界の天才『阿・吽』
恋愛物語が多いおかざき真里の漫画では珍しく、平安時代を舞台にした歴史物語。天台宗の開祖である最澄と、真言宗の開祖である空海をモデルに物語は進められます。ライバル関係にある2人の生き様を描いたヒューマンドラマを楽しめますよ。
- 著者
- おかざき 真里
- 出版日
- 2014-10-10
若き日の最澄の物語から始まります。ある日、最澄の目の前で人が殺されます。しかし彼は助けられなかった自分を責め、一層修行に励むようになりました。そして見事に国家公認の僧になることができたのですが、彼を待っていたのは思い描いていた世界とは真逆の腐敗した仏教界だったのです。一方の空海は大学在学中に勤操という謎の僧侶に出会うことで仏教を知り、その影響からやがて最澄と同じ道を歩むようになります。
静と動の真逆のふたりがいかにして同じ志を持ち、同じ道を究めるのか、またその後いかにして仏教の世界を歩んでいくのかが細かく丁寧に描かれており、内容にボリュームのある作品です。最澄と空海が交わるのはしばらく読み進めてからになるので、個々の生い立ちもゆっくり楽しむことができます。
この作品でまず心に残るのは、やはりおかざき真里の画力でしょう。力強く迫力があるので、心をグッと掴まれるのではずです。また過激な描写は多いのですが、それが作品により深みを出しており、仏教という特殊なテーマに合う作画となっているのです。
仏教と聞くと専門用語が出てくると思うかもしれませんが、難しい単語は多くありません。たまに出てきても珍しい漢字などは使っておらず、ちょっとしたカタカナ表記で読みやすい工夫がされています。仏教について無知であっても十分に楽しめる作品です。
平安時代の僧侶というふたりですが、その生き様からは生、死、欲、希望、絶望など、現代にも通じるいろんなものを肌で感じることができます。歴史が好きな方もそうでない方も、読めばきっと身になるのではないでしょうか。
2位: 主人公は、ダブルワーカー!『&』
昼間は医療事務として病院で働く女性が、夜に個人のネイルサロンの経営を始めるというダブルワークストーリー。作者自身も広告代理店と漫画家を掛け持ちしていた経験があり、ダブルワークをこなす女性像が丁寧に描かれています。
- 著者
- おかざき 真里
- 出版日
- 2010-11-08
26歳の青木薫は、大学時代の後輩である城田孟司と数年ぶりに再会し、彼が経営する会社の1階部分を借りてネイルサロンを開くことになります。薫は他人に触れられることが苦手で、彼氏も今までにいたことがありませんでした。しかし同じ病院で働く医師の矢飼黄河が重たい過去を背負っていることを知り、それ以来、彼にだけは触れたいと思うようになるのです。
本作の見どころは、過去やトラウマに立ち向かっていくキャラクターたちの姿です。矢飼の壮絶な過去に薫はどう寄り添っていくのか、また薫に思いを寄せる城田にはどう接していくのか、ひとつひとつの展開に学ぶものが感じられます。また心に響く名セリフが多いことも、おすすめしたいポイントです。
「最初に身につけなきゃいけねーのは失敗の経験なんかじゃねー 自力で乗り越えられねー失敗なんて委縮のエサにしかなんねーよ」
「どんな職でも20代のうちに成功の実感掴まねー奴は 歳喰ってから方向性見失うんだよ」
(『&』より引用)
「失敗は成功のもと」という言葉がありますが、その言葉に慣れすぎて「成功の実感」という大切なものを忘れがちではないでしょうか?仕事で後悔がある矢飼が言うところに強い説得力があり、妙に納得してしまう場面です。このセリフは薫の働き方や恋愛における伏線にもなっています。
本作は重く切ないストーリーの中に、仕事と恋愛の在り方を見出せる深い作品です。キャラクターの境遇や心情から受け取るものはプラスの感情ばかりではありませんが、仕事や恋愛で行き詰まってしまったとき、この作品を読めば、道しるべになってくれるかもしれません。
1位: おかざき真里が描く、恋と仕事に生きるリアルな女性像『サプリ』
広告代理店で働く女性の仕事と恋愛。作者自身も広告代理店でCMプランナーとして働いていた経験から、かなりリアルな内情が描かれています。本作は2006年にドラマ化もされていて、おかざき真里の代表作といえます。
- 著者
- おかざき 真里
- 出版日
- 2004-06-30
主人公の藤井ミナミは、広告代理店で働くキャリアウーマン。しかし仕事に没頭するあまり、7年付き合った彼氏に別れを告げられてしまいます。自分も別れを意識してはいたものの、いざ相手から切り出されると動揺せずにはいられませんでした。友達もおらず仕事しかすることがなかったミナミは、別れて初めて職場の同僚と交流するようになるのです。
本作のおすすめポイントは、心に刺さるセリフ。どこか真髄をついてくるような言葉選びに、思わず読む手を止めてしまいます。
「始める時は勢いでできる 終わることも簡単だ ただ 続けていくことだけが つらいんだ」
「仕事には2通りあって 経験が積みあがるものと自分が消耗するもの ゆっくりと自分の身をこするように 給料は成果じゃなくこういう消耗に対して支払われている気になる」
「サラリーマンていうのはね 死なないためのシステムなのよ」
(『サプリ』より引用)
などなど、1度でも社会人経験のある方なら共感できる方が多いのではないでしょうか。普段働いている中で「どうして私だけ……」と思う日もありますよね。しかしそんなときに、弱いながらも立ち向かっていく本作の登場人物たちの姿には、励まされるばかり。境遇は違えど、頑張っているのは自分だけじゃないと思わせてくれますよ。職場における女性のリアルな気持ちがわかるので、男性にもぜひ一読してもらいたい作品です。