鈴木みそのディープな知識が読めるおすすめ漫画
マニアックな知識、業界の裏話は『おとなのしくみ』『あんたっちゃぶる』でも変わらないスタンスですが、この『オールナイトライブ』はもう少し踏み込んで、鈴木みそが感じたこと、経験したこと、問題の提示などを、実際に主人公となってルポ形式で書いた漫画。ゲーム専門学校の実情からおしりの拭き方まで幅広くテーマを選んで描いていますが、その中でも考えさせられるのが「バカフリーの街」です。
- 著者
- 鈴木 みそ
- 出版日
この話は、エレベーターは設置されるが、ぎゅうぎゅう詰めの電車の現状は変わらない、しかしそれでもバリアフリー対策は一応されてはいるという考えはどうなのか、という問題提示から始まります。そこから空想の「バカフリーの街」の話が始まります。
その街ではなんでも何かをガイドする看板だらけ。子供から高齢者まで、誰でもわかりやすくガイドをしなければいけない、という法律ができたからです。鈴木みそが奥さんと喫茶店に入ると、「これは机です」と書かれた注意書きから始まり、ウエイトレスは担当名、年齢まで名乗り、メニューには生産地から味わい方まで事細かに書かれているので分厚くなっています。野球の解説だって、いちいち用語の説明からしなければなりません。
大変な世の中になったと漫画の中で鈴木みそは言います。問題提起をしていながらも、結局は解決してはいない。むしろ害が出てきていることに、これではよくないと訴えかけているのです。この漫画は昔のものですが、現代社会は割とこの『バカフリーの街』に近づいてきているような気がします。もっと知られてほしい鈴木みその社会的視点が光った作品です。
自費出版の実体験を漫画に
鈴木みそは電子書籍で大成功した漫画家ですが、その道は簡単ではありませんでした。そしてそのIT産業の模様を実体験をまじえ描いたのがこの『ナナのリテラシー』です。
主人公はPC部に入部しているナナ。中高一貫なので4年生です。職業体験をすることになり、先生の勧めもあって向かった先は「ろくでなしの天才」がいるコンサルタント会社でした。ナナはここでの職業体験を通じいろんな世界を見て、成長します。
- 著者
- 鈴木みそ
- 出版日
- 2014-01-25
第1巻のストーリーは、その会社で行う「鈴木みそ吉」という漫画家の電子書籍のセルフ出版の仕事を間近で見る、というもの。まさに鈴木みそが実際に経験したことです。価格設定、印税の計算など、実際に電子書籍を出したい、と考えている人なら参考になるかと思います。また同時に、出版業界の現実も垣間見えるのです。出版業は苦境に立たされている、と昨今よく聞きますが、その辺もぼかすことなくリアルに描いています。
鈴木みそのすごいところは、電子書籍で成功した!という経験を新たなコンテンツにしたことでしょう。「ゲーム漫画で有名だった鈴木みそ」の殻を破り、「電子書籍で成功した鈴木みそ」という名前の売り方を始めたこと。時代を先取ったスタイルは、他の漫画家にも影響を与えたようです。
鈴木みそが描く地方活性化の未来とは?
伊豆のさびれた街、いわゆる限界集落にある温泉旅館。そこにひとりの男性がやってきます。東京からやってきたゲームクリエイターの溝田が本作の主人公です。彼はその旅館に金儲けの匂いを感じ、立ち退きを迫る組合を追い返し、再興するために奮闘します。
- 著者
- 鈴木みそ
- 出版日
- 2010-02-25
若者を呼び入れようと溝田が率先して取り入れたのはネットやオタク文化でした。最後の場所を探しにやってきたコスプレアイドル「アユポン」、そして彼女を追いかけてやってくるオタクたち、街の人々。
「アユポン」を中心に、追っかけのオタクすら巻き込んで、なんとか人を呼ぼうと力を出しあいます。SNSやインターネットでの集客は最大限に活用し、徐々に活性化していく旅館を見ていると、受け身で待っているのではなく時代の流れに乗ることの重要性を感じます。
今や日本の主要産業ともなってきているアイドル、漫画、アニメなどのポップカルチャーの力は、閉館した温泉旅館に再び息を吹き込むことができるほどのパワーがあるのだと再確認させられます。またルポ漫画時代に培ったオタクに対する習性、特徴などを掴んだ「鈴木みそ節」は健在で、昔からのファンも楽しめる作品です。
この作品が話題となり、再び鈴木みそは電子書籍で成功した漫画家として名前を轟かせることになります。『ナナのリテラシー』と合わせて読むと裏話が見えて面白いですよ。