知れば知るほど面白い漫画家!オノ・ナツメとは?
オノ・ナツメは1977年7月9日に生まれました。高等学校卒業後、小野夏芽名義で同人活動を始めます。2001年イタリア留学を経験した後、2003年ウェブコミック雑誌「COMIC SEED!」において『LA QUINTA CAMERA(ラ・クインタ・カーメラ)~5番目の部屋~』でデビューします。
2000年に行われた主要国首脳会議のテレビ中継を見ていて元イタリア首相ジュリアーノ・アマート氏の老眼鏡姿に一目惚れ。オノ・ナツメの作品に白髪・眼鏡の初老の男性が多く登場するのはアマート氏の影響と思われます。
オノ・ナツメ名義とは別に、bassoという名前でボーイズラブ作品『クマとインテリ』『amato amaro』『Gad Sfortunato』『アルとネーリとその周辺』『ナカさんのながれ』などを発表しています。
漫画はコンテ(ネーム)をまずソファーに座って膝にボードを立てて描き、キッチンカウンターでコンテにそのままペン入れをするそう。流しに置いた原稿を水びたしにしてしまうこともあるというこの生活に密着した描き方は、なかなか他では耳にすることはありません。
毎朝4時にラジオ体操をし、三食キチンと「玄米とお味噌汁とお魚ってかんじ」で食べ、ベジタリアンではないけれどお肉は食べないというオノ・ナツメ。
一瞬で「あ、オノ・ナツメだ!」とわかる独自のタッチ、誰にもマネのできない静かな群像劇、まるで映画のような緊迫感溢れる画面は読者を惹きこみ、その作品は多くがドラマ化、アニメ化などメディアミックスされ、ファンを増やし続けています。
特にオノ・ナツメの描く初老の男性は、ボーイズラブ界に空前のおじさんブームを巻き起こしました。
5位:留学先で起こるドラマ。オノ・ナツメのデビュー作!『LA QUINTA CAMERA 5番目の部屋』
とあるアパートの「5番目の部屋」にまつわる人々を描いたこの作品がオノ・ナツメのデビュー作になります。「5番目の部屋」とは留学生に貸し出されるアパートの1室のこと。イタリアに語学留学にやってきたシャルロットは学校の手違いで中年男4人が同居するアパートを下宿先として紹介され、「5番目の部屋」に住み始めます。
- 著者
- オノ・ナツメ
- 出版日
- 2006-07-28
賑やかな漫画家チェレ、気ままな街角演奏家ルーカ、働きづめのトラック運転手アル、バールを経営する大家マッシモの4人が「5番目の部屋」にやってくる留学生たちと共に軽やかに生きる楽しい毎日がページをめくるごとに繰り広げられます。
ほとんどモノローグのない漫画ですが、登場人物の内心を知ることができないことが逆に登場人物と同じ視点に読者を置いてくれます。私たちは他人の心を知ることができませんが、それでも目の前にいる人を愛し、共に生活してゆくことができる。ふだん意識することのない、そんな人との関わりを素敵に描いた漫画です。
「……おかしいね。チェレのこと迷惑迷惑って云いながらこんなに彼の事考えてる チェレって愛されてるんだな」(『LA QUINTA CAMERA~5番目の部屋~』より引用)
留学生・アキオのセリフにハッとさせられる部分があります。人を愛し共に生きる上で、迷惑などなんてことはない、ということに改めて気づかされます。
また本作で魅力的なのが作中で描かれるのは、ナターレ(クリスマス)、誕生日、妊娠、結婚など身近なイベントの数々。イベントを前に盛り上がったり落ち込んだりする登場人物たちの姿がリアルで、自分が「5番目の部屋」に住んでいるような親しみさえ感じます。イタリアに住んだ気分になりたいならば文句なしにこの1冊です。
4位:オノ・ナツメが描く眼鏡の老紳士はいかが?『リストランテ・パラディーゾ』
「どうしても結婚したい人がいるけどでもその人バツイチ嫌だって!」(『リストランテ・パラディーゾ』より引用)
15年前、そんな言葉を吐いた母に捨てられたニコレッタは、母の再婚相手に「この女はバツイチです」とバラすためローマへ。そんな彼女を老眼鏡の紳士しかいないリストランテ「カゼッタ・デッロルソ」が迎えます。
- 著者
- オノ・ナツメ
- 出版日
- 2006-05-18
あらゆる老紳士を取り揃えました、よりどりみどりでどうぞ、と言わんばかりに老紳士が詰め込まれた枯れ専にはたまらない作品。「カゼッタ・デッロルソ」の従業員が老眼鏡の紳士しかいないのは、ニコレッタの母であるオルガの好みだからだそうで、オルガ、いいシュミしてます。
ニコレッタの復讐劇がメインかと思いきや、ニコレッタは老紳士クラウディオに惚れ、恋愛を話のタネにオルガと「女同士ならではの」良い関係を築いてゆくようになります。
クラウディオの元妻・ガブリエッラに直談判するニコレッタに対して、その場に居合わせたオルガがこう言います。
「さっきガブリエッラに向かっていったあなた カッコ良かったわよ さすが私の娘だわ」(『リストランテ・パラディーゾ』より引用)
この言葉から伝わってくる彼女たちのガッツ溢れる恋愛と生きざまは小気味よいほどです。
女も男も複雑な事情を抱えていますが、その重さや暗さをそれほど感じさせない気軽なタッチで話は展開します。多くの人の記憶にあるであろう、おじいちゃんの皺の刻まれた乾いた手。それにほのかなぬくもりのある登場人物、そしてストーリーが相まり、じんわりと優しい1冊となっています。
番外編作品に『GENTE』もあるのでそちらもぜひ。