1:永遠の14歳となった少年の物語『ポーの一族』
萩尾望都の代表作といっても良い本作。1972年の発表から時を経て、2016年には約40年ぶりとなる新作も発表されました。
物語は1744年、幼くして森に捨てられたエドガーとメリーベルの兄妹が老ハンナ・ポーに拾われた事から動き始めます。
2人を拾った老ハンナの一族は、人の血を吸い不老の時を生きる吸血鬼「バンパネラ」でした。その秘密を知ったエドガーは妹のメリーベルを逃がす代わりに、自分がハンバネラの一族に加わることを約束しますが……。
- 著者
- 萩尾 望都
- 出版日
- 2016-05-09
バンパネラ(吸血鬼)となり、普通の人間に戻りたいという葛藤を抱きながらも、永劫の時を生き続けることになった少年・エドガーの200年以上に渡る人生を綴った物語です。14歳の姿のまま老いることのない少年の、儚くも可憐な美しさは、多くの読者を魅了し続けています。
作者・萩尾望都の描く少年のあどけなさに加え、長い時を生き、人智を越えたカリスマ性と小悪魔的な部分を併せ持つ主人公・エドガーには魔性とも呼べる魅力を感じるのではないでしょうか。
大人になることが出来ず、長い年月を共にした大切な人達を失いながらも、なお生き続ける少年の長い長い人生譚『ポーの一族』。エドガーの駆け抜けた200年余りの人生、その結末は……。少女漫画史に語り継がれる色あせない名作です。
2:青年達が描く無償の愛とは……。『トーマの心臓』
本作の舞台はドイツのギムナジウム(高等中学)。学園のアイドルであったトーマ・ヴェルナーが、突然の自殺により亡くなります。彼の死の翌日、高等部に通う生徒ユリスモール・バイハン(ユーリ)の元に、トーマの残した遺書が届きます。
「ユリスモールへ さいごに これがぼくの愛 これがぼくの心臓の音 きみにはわかっているはず」(『トーマの心臓』より引用)
品行方正で孤独な優等生・ユーリ。そんな彼を愛した、既にこの世には居ない「トーマ」という少年。『トーマの心臓』というタイトルでありながら、読者は「トーマ」という人物像をユーリやその他の登場人物達から読み取っていくことになります。
トーマの死にショックを受けたユーリの前に、ギムナジウムに転校してきた「トーマ」と瓜二つの転校生・エーリクが現れます。彼にトーマの面影を感じたユーリは、始めこそ怒りや憎しみをあらわにしますが、次第に打ち解け、心を通わせていきます。
- 著者
- 萩尾 望都
- 出版日
多感な思春期の少年たちの抱えた、劣等感、心の傷、そして「無償の愛」の物語です。作品のテーマの奥深さは少女漫画の域を越え、文学作品とも呼べるでしょう。宗教的な解釈も多く、初見の際には理解しがたい個所もあるかもしれません。
読者の価値観によって、読み返すごとに印象が変わっていく、そんな作品だと思います。読み込めば読み込むほど新たな発見がある本作。一つの作品をゆっくりと読み返し、物語に浸りたい方へおすすめしたい作品です。
3:居ないはずの「一人」は誰!?『11人いる!』
古典SFの傑作として名高い本作。宇宙屈指の名門校・宇宙大学の入学試験最終科目は、様々な星(作中では国と表記)から集められた10人の受験生が、外部との接触、補給、通信が不可能な宇宙船の中で過ごすという実技試験でした。しかし、10人しかいないはずの受験会場にはなぜが「11人」の受験生がいて……。
作中冒頭、たしかにページ内には「10人」の姿しか見えなかったはずなのに、試験会場となる宇宙船の中には『11人いる!』。そのストレートなタイトルは、読み進めながら、いったいこれから何が起こるのだろう、と読者の心を引き付けます。
- 著者
- 萩尾 望都
- 出版日
隔離された宇宙船の中で起こる様々なトラブル。緊急時には非常ボタンを押すことができますが、その時点で試験は中止されてしまうため、「11人」は疑心暗鬼を抱えつつも協力し合い、隔離された宇宙船の中で様々な問題を切り抜けていきます。
本来いないはずの11人目は一体誰なのか。スピード感のあるSFミステリーに目が離せません。SF好き、ミステリー好き、どちらの方にもお勧めしたい作品です。