ある日突然ヒーローに!山田南平の痛快学園コメディ
こちらは、歌舞伎「三人吉三」をモチーフとして取り入れた、ユニークな作品となっています。もちろん、歌舞伎をご存じなくても充分に楽しむことのできる、学園コメディです。
- 著者
- 山田 南平
- 出版日
- 2005-05-19
舞台となる庚申丸(こうしんまる)高校には、「三人吉三」と呼ばれる謎のグループが存在しています。生徒からの依頼によって、盗みや、問題のある教師をこらしめるという、学園のヒーロー的役割を担っています。主人公で、この学園にやってきた転校生、八百屋七々子(やおや ななこ)、通称やぁや。彼女は新聞部の見習いですが、正式な部員になるため、この「三人吉三」の存在を突き止めようと調査を開始します。
しかし、やぁや本人が「三人吉三」のメンバーである三代目のお嬢吉三に任命されてしまいます。ストーリーでは彼女が戸惑いながらも、徐々に吉三として活躍する姿が描かれます。そして、やぁやは元々引っ込み思案な性格なのですが、お嬢吉三として活躍していくうちに、友達ができたり、自分の想いを伝えることができるようになったりするなど、成長していくのです。
また、実際の歌舞伎では「小悪党」という位置づけの「三人吉三」ですが、本作ではヒーロー的存在。言動はもちろんのこと、装束なども非常にカッコ良く描かれています。そのビジュアルも本作の魅力の1つと言えるでしょう。
なお、歌舞伎「三人吉三」のストーリーと、本作のストーリーは全く異なるものですが、登場人物の名前や高校名なども、実は歌舞伎の中に出てくる名称とリンクしているなど、細かいこだわりを感じさせる作品となっています。
歌舞伎という和のテイストを取り入れながら進む山田南平の得意とする、学園コメディである本作。前向きな気持ちにさせてくれると同時に、こんな学校に通ってみたい!と思わせてくれる、とても愉快な物語です。
切なくも暖かい。山田南平が描く、海辺の町での恋の奇跡
ビーチコーミングという行為をご存じでしょうか。本作は、海で拾った、貝殻などの漂着物を収集して標本にしたり、アート作品を創作したりする、通称浜拾いと呼ばれる、ビーチコーミングや、そこから派生したシーボンアートを題材としています。その作風はとても爽やか。その題材に関わる登場人物たちの恋愛が海の近くで進んでいきます。
- 著者
- 山田 南平
- 出版日
- 2007-01-19
舞台は海辺の町。通学バスの中で痴漢に遭った、主人公の桜井朝(さくらいとも)は、ある青年に助けられます。青年が落としたキーホルダーには、幼い頃海で出会った男の子に貰ったメノウとそっくりな石が付いていました。朝を助けた青年は、同級生の田中天人(たなかてんと)の兄であり、二人が通う高校の校務員である田中陸。助けてもらったことをきっかけに、朝は陸に惹かれていきます。
かつて海で出会った男の子は天人なのですが、それに気づいているのは天人だけ。過去の出会いと約束、現在の状況や心情が絡み合いながら、テンポよくストーリーが進行していきます。
これまでご紹介した山田南平の作品は、設定こそ特殊であっても、ラブコメディの要素が強いものでした。しかし、本作は兄妹の死による親子関係の不和や不登校といった、少々重いエピソードも含まれます。
しかし、それらを通してもなお、主人公である朝が、どんなことにも一生懸命で優しい。どんな相手に対しても真っ直ぐに向き合う姿が嫌味なく描かれていて、重いテーマを扱っていながらもどこか爽やかさが感じられる作品となっています。
天人の制作したシーボンアートに感銘を受け、弟子入りする朝。恋する相手は陸ですが、ひょんなきっかけから、天人の双子の兄妹である洋子が亡くなったことを知ります。そして自分にできる最善を尽くそうと、天人の作品を世に出すために奮闘します。
また、留年したことをきっかけに、不登校がちになってしまった満(みちる)。彼女のことを気にかけて欲しいと陸から頼まれれば、複雑な心境になりながらも懸命にコミュニケーションを取ろうとするのです。
高校生にして、すでにシーボンアートの才能を発揮し、高い評価を受けている幹夫も登場し、恋愛に関してももちろんですが、ビーチコーミングや、登場人物たちの人間関係も、色濃く描かれています。
海に流れてきた物を、ただのゴミとはせず、価値あるものに昇華させるビーチコーミング。その題材に相応しく、朝と関わっていく登場人物たちは皆、真っ直ぐに、前に向かって歩いていきます。彼らの「再生」の姿が、清々しい気持ちにさせてくれることは間違いありません。
山田南平が日舞の世界を題材に!繰り広げられる胸キュンストーリー
ある日突然、憧れの人と心が入れ替わってしまったら?
本作は、そんな面白そうだけれど、全く予想のつかない事態をコミカルなタッチで描いた作品です。それだけでも展開が気になりますが、日舞の世界が取り入れられていてより興味をそそられるシチュエーションとなっています。日舞というと、一般的にはなかなか馴染みの薄い世界。しかしそんな世界の様子も自然に作品に組み込まれていて、山田南平の力量を存分に感じさせる作品となっています。
- 著者
- 山田 南平
- 出版日
- 2009-06-19
千尋、通称ちろは、近所でも噂の美少女ですが、天然でどこか抜けたところのある中学3年生です。幼なじみの律、通称りっちゃんの家は、行谷流(なめがやりゅう)の家元で、ちろも、そこで日舞を習っています。家元の家で育ち、すでに「おいらん王子」と呼ばれ、売れっ子の花形スターである律に、幼い頃から憧れを抱いていたちろ。ある時、彼女は社で「りっちゃんになりたい」と願います。するとなんとその願いが叶ってしまい、ちろと律の心が入れ替わってしまうのです。
しかし、この入れ替わりは、一定の時間が過ぎると元に戻ります。でも、ちろか律のどちらかが、「りっちゃん(もしくは、ちろ)になりたい」と願うことで、再び入れ替わってしまいます。元々律に憧れを抱いていたちろが、律になりたいと思うことは当然としても、律が、ちろになりたいと思うのは、なぜなのでしょうか。
もちろん、幼い頃から可愛らしい律を、妹のように慕っているということもあるでしょう。しかし、それだけではなく、女形としての苦悩や、ちろに対する複雑な心境も絡み合い、ふたりの関係がこの先どうなっていくのか、という期待にも繋がります。
ちろの姉でもあり、律のマネージャーでもある百合や、律の兄であり、律の通う高校の教師でもある鎮(しずか)も、メインの登場人物としてストーリーを盛り上げます。物語中盤から登場する、人間の姿にも化けることのできる狐の左近と右近も加わり、一体どんな結末となるのでしょうか?ハラハラ、ドキドキの連続で、続きが気になって仕方がない作品となっています。