苛烈! 駆逐艦たちの生涯!
特に駆逐艦って何?みたいな今あんまり知識ない方でも、、これから安心して『艦これ』にハマれるような本5冊を選んでみます。そのうち1冊め。これはほんとうに一押し。私はこれで人生キマリました(いいのか?)。
そもそも男の子なら、ウォーターラインという、艦底が省略されてあって、置くだけで海の上に浮かぶ船みたいに見える艦艇のプラモデルに手を出した子は多いはずです。
あれがほんと、細かくて作りにくい上に(パーツがすごく小さいので作業中はくしゃみ厳禁。したらパーツはほぼ必ず紛失します)、さらに細くて繊細なマストとか作って、おおー、できたー、と思って喜んで飾ってると、お母さんに掃除の時ハタキかけられて全滅してで泣く、みたいな。そんな少年時代を経てる人は結構いるはず。
艦これにハマってる人たちのはるか昔、幼少期に出会ったそのプラモデルでの萌えポイントは、その箱に書いてある、その艦の一生を書いた文章。これが字数が限られてるからテンプレみたいなあっさりしたものなんだけど、実にいい。
「駆逐艦***(ここに艦名が入る)
**型駆逐艦の*番艦として****年に就役、***海戦などで活躍しましたが、***海戦の後に日本への帰路で**海峡で米潜水艦****の雷撃を受け、*月*日、**年の生涯を閉じました。」
こんなのが書いてある。これでもともとメカ好き属性持ってる少年は興味を持っちゃうわけですよ。だって「生涯」ですよ。艦、メカなのに生涯。すでにここで(´;ω;`)ブワッと来ます。
ここで同じようにしっかりこういう物語のあるガンダムのガンプラに行く少年もいるけど、ここでうっかりこんな本に出会ったら? 人生変わっちゃうよ、という本。事実私は人生変わりました。
- 著者
- 倉橋 友二郎
- 出版日
- 1987-12-01
というのがこの本です。これがものすごい。
現在このシリーズの他の本が再刊されているのにこの本だけ現在中古のみ、入手困難なのは、再刊のために原著作者さんに連絡を取ろうに当たろうにも、もう時間が経過してて原著作者が訪ね当たらないとかで再刊できないなのかな。調べるたびに、いつも不思議に思ってるんですが。
このシリーズ、本当に旧海軍の方が書いてたので、迫真感のレベルがぜんぜん違う。
なかでも、この本は特に何が凄いかというと、冒頭がいきなり負け戦、空母〈赤城〉の沈没シーンから(´;ω;`)ブワッ。
いや、沈まないんですよ〈赤城〉は。ミッドウェイ海戦で爆撃受けて炎上して、もう復旧できないところなんだけど、沈まない。だってもと戦艦だもん。もともと戦艦だったのを空母にしたのもあって、めちゃめちゃ頑丈で、米軍にひどく爆撃され直撃受けて大破しても沈まない。
でも、沈まないといっても、連れて帰れない。
だからどうするかというと、味方の駆逐艦が魚雷を撃ち込んで「処分」するんです。そのまま漂流させたらいろんな軍事機密の塊ですから、日本海軍は困るのです。
ああ、なんと可哀想な〈赤城〉。当時の日本海軍の主力大型空母6隻のうち、この海戦で4隻沈んじゃうわけです。ゲームだったらもう、心が折れて即リセットしてしまいたいほどの悲劇。でもそうはいかなかった。
空母って攻撃力がすごいけど、逆に攻撃うけるとすごく打たれ弱いんですよ。だから戦闘機とか防空艦、対空砲をいっぱい積んだ艦艇の弾幕で守るわけです。そう考えると、空母は被弾して穴あけられると沈みますが、離島の飛行場は穴あけられても埋めればなんともないです。そこが戦争の勝敗を決めることもあります。ガダルカナル島の争奪戦になるのはそういうところもあり。
でも、空母を守る艦を強くするのも有効な方法です。、そこで日本海軍もそれは戦前からわかってて、秋月型という駆逐艦を作ってるわけです。日本海軍で他になかった上空1万メートルまで弾の届く高性能砲・長10センチ砲搭載!
まあ実際には届いたところで届くまで大砲の弾って時間かかりますし、しかもレーダーとかと組み合わせるの遅れてたからなかなか効果が出ないんですが、でもこの本ではもそこらへんもしっかり描かれてます。対空戦闘の切り札であったのです。
この本の主人公は、〈赤城〉の処分を見て、その後ガダルカナルで戦って、さらにその後日本海軍のほぼ最期の海戦、〈大和〉沖縄洋上特攻に秋月型駆逐艦〈冬月〉に乗り換えて同行するのです。
太平洋戦争のはじまりから終わりまでみっちり。もうそのそれぞれの戦いのすごい迫力。映画「プライベートライアン」冒頭の艦船版か、ってほど。その苛烈な戦闘シーンと、途中の艦船乗組の日々の描写との緩急もすばらしい。でも日本でこの本をこういう迫力で映画化なんか絶対できないだろうなあ……。
という、十分に少年の人生をばっちり艦船好きに染め、人生を変えてしまう力のある本です。不利でなおかつ負けの続く戦いの中でも立ち向かった駆逐艦乗りの魂もまた、心弱った時の現代の我々の心にも響きます。
空母の戦いと、それを支える健気な駆逐艦たち。
で、その旧海軍の空母がどういう戦いをしたかということについ興味が向くと、この本が実に渋い。
- 著者
- 滝沢 聖峰
- 出版日
この本も変化球な始まり方。なんと太平洋戦争のはじまり、ハワイ攻撃に行ったのに、なんと攻撃に出られない攻撃機のチームの話なのね。他のチームがばんばん戦果上げて帰ってくるのに、何もできなかった……それもチームの一人が盲腸で飛べなくて(´;ω;`)ブワッ。
でも仕方ないんです。当時の攻撃機は3人一組でないと飛べない。レーダーも当初はない、あったとしても逆探知されるわけにはいかないので使えない。当然今みたいなGPSもない。じゃあどうやって洋上にぽつーんといる母艦にもどったか?
偏流っていう気流の流れを調べて、飛んでいる位置を航空地図上で推測する図を作って、それで母艦の位置にむけて進路を決めて飛んでいく。天測と言って太陽や星の位置と時計を使いもする。今でもできなくはないけど……しんどいよねえ。
でもそれでみんな戦ってたんです。しかもそれではるか遠くの相手の空母の位置も調べて、攻撃して、戻ってくるわけですよ。なんという難易度の戦い! 戦う前に迷子になってしまう! しかも洋上で迷子になったら、もうその時点で生きて帰れないんですよ!
でもそういう戦いを太平洋で日米はやったんですよ。ガチで。そりゃ米海軍は日本海軍をバカにはできませんよね。ほかにこんな空母対空母で戦うようなライバルいなかったんですから。だから今でも米海軍と、日本海軍をつぐ海上自衛隊は深くリスペクトしあってるんです。
そんな攻撃機が発艦するときに、発艦失敗したら不時着した搭乗員を救助するのは駆逐艦。戻ってくるまで待ちながら空母を守るのも駆逐艦。いきなり不意打ちしてくる潜水艦から空母を守るのも駆逐艦。そのうえ敵艦に向かって戦いを挑み、さらにはその俊足を活かして離島に物資輸送までする。
とにかく駆逐艦は働きものでなくちゃダメなんですよ。空母機動部隊の雑用関係全部やるわけです。しかも消耗品扱いなので、艦首には戦艦や巡洋艦・空母みたいな菊花の飾りがないんです。うう、駆逐艦って健気だ……。そこらへんも萌えポイントです。
この本は、戦記物というとつい「出撃しましたー、攻撃しましたー、勝ちましたー」となりがちなところを、そうはならないストーリーがまた秀逸。搭乗員の生活感もありながら、勝つ時もあれば負ける時もある。むしろ、ビターな味わいのエピソードが多い。そのなかで葛藤、苦悩、迷い、人間関係、しかしそのなかで見出すもの。実に渋い。
それがほんと、すべて最後のシーンに集約されるのは実に見事。圧巻。ドラマティックとはこのことです。
健気な駆逐艦の生活を図解で!
そういう旧海軍駆逐艦、実際どんな艦だったのかというと、この図解が楽しい。
- 著者
- 森 恒英
- 出版日
現代の駆逐艦って7000トン(排水量。艦艇の大きさはこの数字で示されます)超えたりします。米軍が中国の揉めてる海域に派遣した駆逐艦〈ラッセン〉は9468トン、全長155メートル。最新鋭の米海軍ズムウォルト級に至っては1万トンを超えます。
ところが、当時の駆逐艦はたったの2000トン前後。全長も130メートルぐらい。
幅に至っては11メートルちょっと。なんと、山手線の電車1両の長さの半分しかない!
狭い! とにかく狭い!
そのなかにどでかいボイラーとかのエンジンがあって、対航空機、対艦船、対潜水艦の武装を積み、その武装の整備をする所あり、乗り組む人たちの食事作るキッチン(烹炊所)があり、服を洗濯するとこあり。
この図解を見ると、なんとも生活感があるんですよね。そこに生活する乗組員の息吹が感じられる。
ここで、ふと思う。これ、『天空の城ラピュタ』の海賊飛行船「タイガーモス号」と似てるなあ、と。
たしかにそうなんですよ。あのタイガーモス号の好ましいコンパクトな機能性と意匠、あれがすごく旧海軍の駆逐艦に似てる。まあ、宮崎駿監督もこういうの密かに好きらしいから(少なくともミリタリーマニアであることは知られている)、この本のもとになったいろんな資料を参考にしたんじゃないのかなあと思うのです。
とにかくこの図解見てると、この駆逐艦でどういう生活があり、戦いがあり、喜怒哀楽があるかの妄想がすごく捗ります。パズーとシータのあの素敵な見張り台そっくりなのも旧海軍の駆逐艦にある!
そんななか、日本海軍の最後のあたりにでてきた秋月型駆逐艦がどれだけ期待されてたかも、考えるだけで興奮します。その後建造されたの松型駆逐艦はダウンスペックというよりは性格が変わっちゃうんですが、史実ではあんまり一斉に揃わなかった高価な秋月型駆逐艦がバンバンそろって空母を守って進撃する姿の幻を思うと……ああああ、さらに妄想が捗ってしまう!
あとこの本、ぶっちゃけ、艦これコスプレの資料にもいいかもと思う。詳細な図解は見ているだけで、なるほどこういう仕組みなのかとメカ好き、ガジェット好きの心にも響く。一冊持ってればかなり長く楽しめる本です。