『テルマエ・ロマエ』でおなじみの漫画家、ヤマザキマリ
ヤマザキマリは1967年東京生まれの漫画家です。母親がヴィオラ奏者として札幌交響楽団に在籍していたことから、幼少期を北海道千歳市で過ごしました。彼女はこの地で雄大な自然と共に活発に育ちます。
14歳の頃、急用で行けなくなってしまった母親の代わりに1ヶ月ドイツとフランスを一人旅します。この時列車の中で偶然出会ったのがイタリア人の陶芸家、マルコじいさん。マルコはヤマザキマリに、イタリアに絵を見に来る様に力説し、ヤマザキは17歳の時にマルコを訪ねて渡伊します。そしてフィレンツェにあるイタリア国立フィレンツェ・アカデミア美術学院へ入学。そこで美術史と油絵を学びました。
学生時代に出会ったイタリア人男性の子供を27歳で出産。そのままシングルマザーに。その後日本に帰国して漫画家となります。
35歳の時に14歳年下のイタリア人男性と結婚。その後夫の仕事の関係で世界中を転々とする生活をし、2008年に描いた『テルマエ・ロマエ』が爆発的な人気となり、「ヤマザキマリ」の名が広がっていきました。
国境なんて越えてゆけ!ヤマザキマリの本と旅『国境のない生き方 私をつくった本と旅』
『国境のない生き方—私を作った本と旅—』はヤマザキマリが人生を共に歩んできた本と旅を綴った作品です。旅の行き先は世界中のあちこち。本は日本の文豪からコロンビアのノーベル賞作家まで。この本には小さな枠にとらわれることなく「地球人」として生きる彼女の魅力がぎゅっと詰まっています。
- 著者
- ヤマザキ マリ
- 出版日
- 2015-04-01
「自分が暮らしている町でもなく、国でもなく、自分が生きているこの地球、この地球でいきているありとあらゆる生き物、そういうすべてをふくんだ宇宙、そこまで地図を広げていったら、ものの考え方や見え方も変わるんじゃないか」(『
国境のない生き方—私をつくった本と旅—』から引用)
ヤマザキマリの人生の舞台はズバリ「地球」。「ラテン音楽が好きだから、ちょっとキューバへ」。「日本一周なんて簡単。車で行けるし」。「偶然出会ったイタリア人のおじさんを頼ってイタリア留学」。彼女は興味のある方向へ、自分の好きな方向へ、自由に力強く進んで行きます。国境なんて関係ない。正真正銘のボーダーレスなのです。
彼女の読書遍歴もまさにボーダーレス。時代もジャンルも越えて行きます。安部公房の美意識に酔いしれたり、小松左京のSF物語に夢中になったり、ガルシア・マルケスに感銘を受け、暗記するほど夢中になったり。
彼女の持つ視野の広さ。そして地球上の様々なものを素直に受け入れて噛み締めて、自分の肥やしにしていく柔軟さ。ヤマザキマリの「地球人」として生きる逞しさには驚きを隠せません。まるで自分の固定概念をガラガラと崩されるような衝撃。目から鱗が落ちる思いです。
彼女はこの本の最後にこんな言葉を記しています。
「単純に地球があって、太陽があって、この環境の中で生きていける生命体として、私たちは命を授かったのだから、まず『生きてりゃいいんだよ』。これが基本。生きてていいから、生まれてきたんですよ。」(『国境のない生き方—私をつくった本と旅』より引用)
自信に満ち溢れたこの言葉の力強さ。この本を読めば、自分で自分を閉じ込めていた囲いを思い切って壊す勇気が湧いてくるかもしれません。
イメージと違う!?イタリア人との生活記録漫画『イタリア家族 風林火山』
ヤマザキマリとイタリア人の夫ベッピーノ、そしてその家族の日常生活を軽いタッチで描いたのが本作です。
登場人物は著者本人と、ジェントルマンだけど古代ローマオタクの夫・ベッピーノ。一人息子のデルス。息子を溺愛する姑マルゲリータに、発明品の作成に夢中の舅アントニオ。個性豊かなイタリア人家族との生活を描きます。おもしろすぎる彼らの日常生活に、クスクス笑いが込み上げてくること間違いなしです!
- 著者
- ヤマザキ マリ
- 出版日
- 2010-06-25
特に面白いのがこのエピソード。家族にすすめられて、ヤマザキマリが街で1番のカリスマ美容師の元を訪ねた時のこと。オネエ系のイタリア人カリスマ美容師は、彼女の希望を聞くことなく勝手に髪を切り始めます。髪を切っている間に渡されるのは雑誌ではなくカリスマ美容師の元に届いたファンレター。それでも黙って耐えていたら、なんと髪の毛が凄いことに!モジャモジャの爆発頭になったのに「私って天才!」とご機嫌なカリスマ美容師。底抜けなイタリア人の明るさがよく表れているエピソードです。
他にもヤマザキマリがイタリアで出産したエピソードや、イタリア人家族とアドリア海クロアチア沿岸のヨットクルーズをしたエピソードなど、ハプニング続出、笑いが止まらない読者泣かせのエピソードが盛り沢山です。
個性の強すぎるイタリア人家族に振り回される日々の中で、ヤマザキマリは果たして幸せなのでしょうか?物語の最後はこんな後書きで締めくくられています。
「振り幅の大きな人生を送る激しい私ですが、それに動じず、唯一当たり前に受け入れてくれるのが、この漫画で紹介したイタリア家族なわけです。穏やかじゃない人が穏やかじゃない家族の一員になる。世の中本当にうまくできているなと思います」(『イタリア家族 風林火山』より引用)
あれだけ笑わせておいて、最後にはじーんとさせる。さすがはヤマザキマリ。お見事です。