今市子が描く泣けるストーリー展開がおすすめ!BLが苦手な方も
この作品は、表題作他を含む4編からなる短編集となります。
どのストーリーも、男性同士の関係性や、それにまつわる心情を描いたものとなるため、ジャンルとしては、先にご紹介した『B級グルメ倶楽部』同様、BL(ボーイズラブ)にあたるとも言えるでしょう。
- 著者
- 今 市子
- 出版日
- 2006-03-04
しかし、明るく楽しい男性同士の恋愛といった雰囲気ではなく、叶わぬ恋であったり、ハッピーエンドとならない結末を迎える作品も含まれたりしています。幅広い世代の登場人物がいることから、単純に、BLという括りには収まらないものが多く、少し考えさせられるような読み応えのある作品。
『笑わない人魚』や『真夏の城』は、あるきっかけで、主人公達の過去の想いが蘇り、実はずっとその過去に囚われているというストーリー。さらにその相手が近親者であったり、想いを寄せる相手には、実は他に好きな相手がいたり、と一筋縄では行きません。短編であるにもかかわらず、短いストーリーに恋愛における障害がいくつも詰まっていて、非常に濃い内容の作品となっています。
それぞれ、単体でも充分に完成された作品となっていますが、『笑わない人魚』の後日談は、本短編集内の『廻遊魚の孤独』で描かれていたり、『真夏の城』は後に独立してシリーズ化された作品となっていたりします。他の作品との繋がりを考えながら読むという目的でも楽しめます。
また、表題作である『笑わない人魚』は、叶わぬ恋という点で、童話に登場する人魚の運命が重なったり、収録作である『青髭の友人』は、ずばり童話『青ひげ』を連想させるようなストーリー展開であったりと、ファンタスティックなモチーフを上手く取り入れているところも魅力的。短編でありながら、濃密な作品として仕上がっている要因と言えるでしょう。
ちょっと変わった作風が今市子ならでは!おすすめBLコメディ
タイトルからも察することができる通り、こちらも男性同士の関係を描いた、BL(ボーイズラブ)作品となります。しかしそこは、BLと言い切るには惜しい程の、複雑な家族の関係と恋愛模様が交錯する、今市子独自の恋愛コメディに仕上がっています。
- 著者
- 今 市子
- 出版日
- 2007-08-29
主人公は、15歳の聖(さとし)。二丁目デビューを果たした日に、鉄平(てっぺい)に恋をします。しかし、疎遠となっていた父親の訃報を受け、せっかく鉄平といい雰囲気になれたにも関わらず、その場を立ち去らなければなりません。
父親の葬儀に現れたのは、父親の前妻である人物や、その息子・彰人(あきと)。さらには、亡くなっていたと思われていた、聖の母親・早苗や、早苗の再婚相手の連れ子・鉄平だったのです。
様々な事情により、早苗の家で、聖と鉄平、そして彰人が同居することになりますが、波乱万丈な展開を繰り広げながら、物語は進行していきます。
想い合っているはずの二人が、なかなか平穏な関係に落ち着くことができないじれったさは、恋愛漫画の王道といえるパターンかもしれません。しかし、気が付くと作品に惹き込まれてしまうのは、特殊な状況下でありながらも、メインとなる二人をはじめとした、人間味溢れるキャラクターの宝庫であるからです。
例えば、五股六股は当たり前の、女性関係に節操の無い彰人ですが、実は母親との関係性が原因であることが徐々に明らかにされます。また、聖の母親である早苗も突然の変化に苛立ち、悲しみながらも、母親として、そして働く女性として奮闘する姿丁寧に描かれているのです。
他にも、それまで聖を育ててきた、祖父と曾祖父や、鉄平の元彼など、それぞれが、しっかりと確立されたキャラクターとなっていますので、豊富な登場人物の中から、お気に入りのキャラクターを見つけてみることも、本作の楽しみ方の1つかもしれません。
まさに今市子の代表作!普及の名作をもう一度読もう!
『百鬼夜行抄』(ひゃっきやこうしょう)は、2006年「文化庁メディア芸術祭」の漫画部門で優秀賞を受賞し、舞台化・ドラマ化もされた、今市子の紛れもない代表作です。
- 著者
- 今 市子
- 出版日
- 2007-10-01
妖怪や妖魔との関わりを描いたホラー作品に分類されますが、今市子の繊細なタッチで、緻密に描き込まれた絵と、綿密に構成されたストーリーによって、恐怖を与えるだけのホラーとなっていません。時には和やかな雰囲気を醸し出しながらも、所々にゾッとするような仕掛けが施された、非の打ち所のない作品に仕上がっています。
主人公の飯島律(いいじまりつ)は、今は亡き、有名な怪奇幻想作家であった祖父の蝸牛(かぎゅう)から受け継いだ霊感によって、妖魔や妖怪、霊が見える上に、それらと意思疎通が図れます。
また、律の父親である孝弘は、律が幼い頃、心筋梗塞で一度は亡くなったものの、息を吹き返したことがあります。しかし、実は、生前の蝸牛から、律のことを守るよう命令された式神・青嵐(あおあらし)が孝弘の体に住み着いているのでした。律が死ぬまで、彼を守る義務のある青嵐と律の、奇妙な関係を軸にストーリーが展開していきます。
この作品でもキャラクターが魅力的。律の従妹・司を始めとした、霊感の度合いや特徴がそれぞれ異なる飯島家の人々。とある事件がきっかけとなり、自ら律を守る式神として使い魔となっている、鳥の姿をした、尾白、尾黒に、人間の姿になりすましているが、実は後頭部にいくつも目玉のある赤間など、人間、妖魔に関わらず、律を取り巻くキャラクター達が重要な役割を担って物語を彩っていきます。
一見すると関連性の無いエピソードも、実は、物語全体にとって重要な伏線を含んでいたり、妖魔を通して人間の欲深さが描かれていたりと、奥が深く、何度も読み返したくなるような作品となっています。