100年以上続いた乱世の世を終結に導いた革命児、織田信長。既成概念を壊していくその独創的な手腕は実にドラマティックです。信長を扱った書籍は数えきれないほどありますが、少し視点を変えて読み取ることで新たな信長像が浮かんできます。

1:舞を好んでいた
「人間五十年〜」から始まる「敦盛」の一節を好んでいた信長は度々この一節を舞ったと伝えられており、桶狭間の戦いの直前にも「敦盛」を舞ってから出陣しました。信長が好んだこの一節の意味は「人の一生の五十年は下天ではわずか一日しかあたらず、夢と幻のようなものだ」という意味で人の世の儚さを歌っています。
2:滅ぼした大名の頭蓋骨を酒宴の余興にする
信長は自らが滅ぼした朝倉義景・浅井久政・長政の頭蓋骨を金塗りにして酒宴の余興にしています。信長の、自らを苦しめた敵に対する憎しみをよく表しているエピソードです。酒宴は盛り上がり、信長も満足した様子だったと伝えられています。一説には、頭蓋骨を杯にしたとも言われています。
3:相撲が好きだった
相撲の大会を度々開いたという記述が「信長公記」に書かれています。初めて相撲大会の記録がみられるのは1570年のことで、国中から力士を呼び寄せて常楽寺で相撲大会を開いたという記録が残っています。これ以降、信長は度々相撲大会を開いては活躍した力士を召抱えたり、恩賞を与えたりしていたのです。
4:裏切った武将を度々許していた
父・信秀が亡くなった後の家督争いで弟の信勝へと裏切った柴田勝家と林秀貞を信長は戦いに勝利したのちに許して帰参させています。信長が京に上洛してきた頃、いち早く降伏した松永久秀も後に信長を裏切っていますが、一度許されているばかりでなく、二度目に裏切った時も久秀が自害する前に信長は名器である「平蜘蛛茶釜」を差し出せば許すと寛大な態度をとっています。
5:息子・信忠の能狂いを叱る
信長に家督を譲られ総大将として、数々の戦いを勝利に導く有能な武将に成長した息子の信忠は大の能好きで、信長はそんな息子の能狂いに目を止めて、「武将である者が能にうつつを抜かしているとは何事か」と、能に使う道具を取り上げてしまいます。その後しばらく信忠は謹慎していましたが、謹慎が解けてすぐ弟たちと能を舞って遊興したと伝えられています。
6:黒人をボディーガードとして雇う
キリスト教の宣教師が信長の下を訪れた時、その一行の中に黒人の奴隷がいましたが、信長はその黒人に興味を抱き、頑強で、日本語を操ることもできたこの黒人を大層気に入って、「弥助」と名付けて自らの側近に取り立てます。
7:息子たちの名付け方が適当
戦国時代の武士の子には小さい時だけにつける幼名がありましたが、長男秀忠には顔が奇妙だったことから「奇妙丸」次男の信雄には茶を混ぜる道具からつけた「茶筅丸」三男の信孝には3月7日に生まれたからという理由で「三七」とどれも適当に名付けています。
「旧秩序の破壊すなわち進歩という観念もまた、わりあい限られた時代の思考であり、いつの時代にもあてはまるとは限らないといえよう。特に近代科学以前の織田信長の時代に、こうした思考が至るところにみられたとは、必ずしもいえない(『織田信長』より引用)」。
- 著者
- 神田 千里
- 出版日
- 2014-10-06
「見苦しいことを信長公がされた。町を通行中、人目をはばからず、栗や柿は言うまでもなく、瓜までもかぶりつき、町中で餅を立ち食いし、人に寄りかかったり、人の肩にぶら下がるような歩き方しかなされなかった。その頃の世間は地味だがしっかりした風潮であったので、信長公を「大うつけ」と言わない人は無かった(『現代語訳 信長公記』より引用)」
- 著者
- 太田 牛一
- 出版日
- 2013-10-10
幅約6m、長さ180mも続く直線道路「大手道」は、天皇行幸を目的として作られたとするのが通説ですが、本書では「大手道は信長の権威を人々に印象づける極めて強い象徴性を発揮したのです。直線を選択した理由には、それが周辺の城内機能にとって合理的であったことに加え、ビスタ(見通し)を意識した政治的演出があったと評価できます(『信長の城』より引用)」として、信長の権威の象徴説を訴えます。歴史的スペクタルを感じる解釈ですね。
- 著者
- 千田 嘉博
- 出版日
- 2013-01-23
「朝倉義景というのは、いちかばちかの決戦などとうていできない大将である。~中略~ 信長は、敵将義景の性格までを読み取ってこうした作戦を立てたのである。」(『織田信長合戦全録―桶狭間から本能寺まで』より引用)
- 著者
- 谷口 克広
- 出版日
「彼は中くらいの背丈で、華奢な体躯であり、ヒゲは少なく、はなはだ声は快調で、極度に戦を好み、軍事的修練にいそしみ、名誉心に富み、正義において厳格であった。」(『完訳フロイス日本史〈2〉信長とフロイス―織田信長篇(2)』より引用)
- 著者
- ルイス フロイス
- 出版日
織田信長は、様々な資料や作品でそれぞれ違った魅力を見せてくれます。やはりそれだけ類い稀な人物なのだということでしょう。戦国時代の終焉を導いた絶対的存在の織田信長。色々な本を通して信長像を探るのも歴史の面白さではないでしょうか。