一風変わった少年国王の大暴れ『パタリロ!』
1978年に連載開始され、1982年にテレビアニメ化、1983年にアニメ映画化、2016年に実写舞台化されています。
舞台はバミューダトライアングルの中心に位置する架空の島国「マリネラ王国」、主人公のパタリロ・ド・マリネール8世(通称;パタリロ)は、10歳にしてマリネラ王国の国王です。
若くして国王の重責を任されている少年と聞くと、どんな不憫な境遇なのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ことパタリロに関してはそのような心配はいりません。
国王に即位した10歳の時点で、国立マリネラ大学文学部家政学科を卒業している秀才であり、非常に頭脳明晰で国政を司る地盤は既に出来ており、年不相応に国王としての自覚も持っています。
パタリロは非常に優秀ですが、一方で非常に困った国王でもあります。大人顔負けの政治的取引を行える聡明な頭脳を、私欲と悪戯に使ってしまうからです。
周囲の人間は時にそんな悪戯に生命の危機にさらされる程の迷惑をこうむりますが、パタリロは何度怒られても悪戯をやめません。それどころか、自分を諭そうとする相手を理詰めで論破してしまいます。
自身を「美少年」と自称するパタリロですが、暴飲暴食の果てに成人病を多発し、まん丸に肥えた下膨れの容姿をしています。
そのほか、非常に度を越した守銭奴であったり、弾みでタイムトラベルをする超能力を持っていたり、指が四本しかなかったり、内臓が気まぐれに場所を移動してしまったり、体液が紫色をしていたり、84か国語を操り、変装の名人であったり、母親の前では猫をかぶったり、オカマに弱かったり、ゴキブリが大好きだったり、殺しても死ななかったりと、パタリロを語る言葉は尽きません。
- 著者
- 魔夜 峰央
- 出版日
ハチャメチャなパタリロが主人公のギャグマンガですが、1970年代に流行った耽美風の絵柄で、戦争や殺人といったシリアスな題材も扱っています。宇宙人やタイムワープといったSFの要素も含まれていて、なおかつその全てが理にかなった矛盾のない絶妙なバランスで仕上がっているのです。
パタリロは国王という立場ゆえMI6やCIA、KGBといった国際的重要機関にも友人がたくさんいます。
中でも仲の良いMI6のバンコラン少佐は、非常に有能で美丈夫な男ですが少年しか愛せない性的趣向を持っていて、愛人のマライヒも少年です。そのほか、ロリコンのCIA調査員ヒューイットなど、性的マイノリティを持った登場人物も多く、少女漫画としては異色の作品でもあります。
自己中心的な言動をするパタリロですが、困っている人を放っておけない人情派な一面を持っており、部下や友人のために怒ったり泣いたり力を貸したりもします。また、悪戯や悪企みが大好きな反面そのほとんどが失敗に終わるため、最後に泣きを見るのがパタリロ自身ということも多く、憎めない主人公です。
有名な話ですが、X JAPANのギタリストPATAは、『パタリロ!』のファンだったので、主人公の名前を拝借したそうです。
基本的に一話完結の作品で、どの巻から読んでも楽しめる構成になっていますので、ぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか。
破壊的な性格の失恋マイスター『ラシャーヌ!』
1987年~1989年にかけて発表された作品です。単行本で11巻発行されています。
主人公のラシャーヌはインドの貿易商の息子で、美少年ですが性格が破たんしています。人を真剣におちょくるのが大好きで、本人は洒落のつもりでも相手に洒落にならない大損害を与えてしまうこともしばしば。悪知恵の働く聡明な頭脳で考えた末に、悪気があってやっているわけですから、とてもタチが悪いのです。
- 著者
- 魔夜 峰央
- 出版日
性格や裕福な身の上であり、発表時期も近いことから『パタリロ!』の前進になった作品と言われています。
タイトルに主人公の名前を使うのは、魔夜峰央曰く「名前を憶えてほしいから」なのだそうです。
破綻的な性格をしているラシャーヌには、もう一つ厄介な癖があります。それは男女問わずに惚れっぽい性格だということ。しかし、最後は必ず失恋し、「あーーい」と特徴的な泣き方をします。
ラシャーヌが人に惚れること、そして失恋することは、この作品において決定事項で、正義の味方が最後に悪を必ず倒すようなお約束の展開でもあります。
また、大変ひねくれた性格のラシャーヌは初対面の人にも真顔で冗談を言っておちょくるので、たいていの人はラシャーヌに対して「おかしな子」という印象を持つのも、お決まりの展開です。
悪戯好きでどうしようもないラシャーヌですが、その歯に衣着せぬ毒舌は、「普通」は言えない真実を簡単に言い当てます。自殺願望のある少年に向かって「生きててもしょうがないならどこで生きはじさらしても同じでしょう」なんて、思っていてもなかなか言えません。
悪戯が巡り巡って人助けに繋がることもあり、読者を飽きさせない工夫が随所に織り込まれているとても楽しい作品です。
興味を持たれた方は、ぜひお手に取って失恋の達人ラシャーヌの日常を覗いてみてはいかがでしょうか。
硬派と女形の卵のちょっとおかしな恋物語『美少年的大狂言』
1985年に発行されたBL作品です。
物語の舞台は硬派が集う名門男子校、青嵐高校。「戦後の軟弱な風潮をたたき直さん」と設立されたその学校の生徒会長、寺限城太郎は超の付く硬派で、他校の生徒からも「超硬派のJ・J」と呼ばれ、恐れられています。
そんな城太郎の家に、ある日突然、謎の美少女が押しかけてきます。
桃色の靴下でさえ許容できない城太郎は、その美少女を追い出そうとしますが、彼女は引きません。聞けば、「暴漢に襲われていたところを助けてもらったお礼がしたい」とのこと。
城太郎は礼などいらないと、一切聞く耳を持ちません。城太郎の取り巻きの生徒会の者たちも「犬がいじめられていても同じことをなさった」、「会長は女性は相手になさらん」と、美少女に諦めるよう促します。
そこで美少女からの爆弾発言「あちき女じゃないよ」が飛び出すのです。
- 著者
- 魔夜 峰央
- 出版日
- 2000-09-01
男がスカートなどはくなと憤る城太郎に対し、美少女(改め美少年)は男がスカートをはいちゃいけない法律はないと言い返します。
聞けば女装した美少年市川桜丸は、人間国宝の歌舞伎役者を祖父に持つ女形の卵とのこと。祖父に、見た目は立派な女形だが、肝心の心が入っていない、素敵な男に恋をしろと言われ悩んでいたところを城太郎に助けられ、恋に落ちてしまったと言うのです。
それでも、そんな事情は関係ないと突き放した城太郎でしたが、人間国宝の祖父を通じて、城太郎の祖父から同居の許可を取り付けた桜丸は、半ば強引に城太郎の家に転がり込んでしまいます。
そうして始まった同居生活は城太郎にとって苦痛を伴うものでした。ロングヘアーで綺麗な顔立ちの桜丸はどこから見ても美少女にしか見えない上に、家の中でミニスカートをはき、女性もののランジェリーで過ごします。ことあるごとに対立する二人ですが、城太郎がどんなに恫喝しても、桜丸は信念を曲げません。
女性を相手にしない城太郎は、同性に対して特別な感情を抱く手合いでもありません。桜丸がどんなに本気の恋心でアタックしても、指の毛一本なびいてはくれないのです。
そんな二人の奇妙な生活は常に波乱の連続でした。青嵐高校には、次から次へと厄介な訪問者が現れます。フリーランスのストライキ屋、学校を乗っ取ろうとする転校生、十年間外界と隔てられすっかり退化した特別教室の生徒たち、多聞天の祟りと偽り人さらいをする男など、今まではそういった厄介者を力づくで跳ね除けてきた城太郎でしたが、力だけではどうにもならない相手もいます。
そんな相手に対し、なぜか桜丸の機転が利いて毎回ことなきを得るのです。
硬派な城太郎がもっとも忌み嫌う、軟派の塊のような桜丸。彼の一途な恋心が、城太郎の心をゆっくりと開いていく様子に、初恋の初々しさを感じて思わず桜丸を応援したくなります。
作中、桜丸の女子力の高さに、うっかり男であることを忘れてしまうかもしれません。
魔夜峰央の得意とするギャグ要素も随所に散りばめられているこの作品、興味を持たれた方は、ぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか。