10位:サトリ型ヒロイン少女漫画:「ふつう」編
恋多き母親と頑なで地味な姉を持つ女子高生・恋子。彼女は派手でもなく、地味でもなく、顔も中、恋もしないでもないくらいで、ふつうの自分にぴったりなふつうの彼氏がいます。傷つかないよう、はみでないよう平穏に暮らしていて、それなりに満足な日々でした。
ある日、学年でも噂の「階層違い」の男子・二宮剣からメッセージがきます。「あんたの彼氏、浮気してる」。送られてきた地図の場所に行ってみると、彼氏が自分より長い期間付き合っていた年上の女といるところを目撃してしまいます。
- 著者
- ななじ 眺
- 出版日
- 2016-04-25
一度は別れようとしましたが、結局波風立たせないようにとヨリを戻すことに。恋子は剣にどうしてそんなバカなことをするのかと問い詰められ、逆になぜそんなに構ってくるのかとイライラして声を荒げます。
「てかさなんなのあんた 下界に降りてくんなっつーの 下界は下界でそれなりにやってんだよ(中略)下すぎないとこ!しあわせのくに!」
それを聞いた剣はやっと腑に落ちた顔をします。どうしてこんなにも恋子が気になるのか。
「あんた しあわせじゃなさそうな顔してっからだ(中略)なんか かわいそうな顔」(一重括弧内すべて『ふつうの恋子ちゃん』から引用)
堅実で高望みしない、自分の欲求を抑えるような「サトリ型ヒロイン漫画」は2016年良作が多くありました。その中でもこちらはとても若い女性向けのスイートなもの。少女漫画テイストが多めで、キュンキュンさせられます。可愛い絵は完成度も高く、まさに少女漫画という趣です。
堅実に、「ふつう」に、をモットーとして生きてきた恋子が上野くんに本性を見抜かれ、ほだされていくストーリー。よくある少女漫画展開は、盛り上がりの場面までの助走をしっかりと丁寧に描き、どれだけ感情移入させられるかが重要になってくるかと思います。
本作品では「恋に大きく左右されたくない」という恋子の頑なさとそれを形成した母親、そしてそれに反発しすぎた姉の様子がユニークに描かれています。
書道の時間に堂々と「ふつう」と書く恋子の目は小学生にして意志が強そうでまっすぐ。そしてその更に上を行くのが姉・愛子です。頑なに恋などしたくないという愛子は高校生の恋子と同じラインナップの最低限のメイク道具に、機能性が高そうなシンプル下着という身だしなみです。
それに対して彼女たちを育てたのは小料理屋のモテ女将であるお母さん。彼女はしっとりとした色気を身にまとっています。しかしそこはサトリっ子ふたりを育てた母親。一筋縄ではいきません。
ある時は微笑みながらスクールカーストを理解していない上野くんにノリノリでその残酷な現実を解説します。彼女は我が娘を「中」だと言い切り、上野くんを「上」だと丁寧に解説してくれるのです。世知辛い……。
しかしそんな自覚があるからと言って、恋は勝手に始まってしまうもの。やはりここが物語の見せ場です。ここまで細かなディテールで頑なな少女の様子を読んできた分、恋子の恋愛パートでよりいっそうニヤニヤしてしまいます。果たして彼女はどんな恋愛をするのでしょうか?少し鈍感な王子様・上野くんにキュンキュンしながら楽しんでみてください!
9位:異星人系ラブストーリー@少女漫画版テラスハウス
女子高生・芹沢天は片道2時間のバス通学を始めてから1ヶ月が経ちます。そんな朝にも慣れてきて、登校中のバスで制服のスカートのまま横になって眠ったり、寝転んで靴まで脱いでお菓子をぽりぽりしたり……。
ある日放課後にクラスメイトに誘われて、喫茶店でガールズトーク。しかしバスの最終が迫っているので天は仕方なく帰ろうとします。そこで親友のあげはが「うちに泊まりにきなよ」と誘ってくれます。最初は遠慮していた天ですが、あげはの優しさを受け止め、にっこりと「ありがとう」と言い、泊めてもらうことになります。
- 著者
- 森下 suu
- 出版日
- 2016-01-25
彼女の住む下宿での生活を見ているうちに、その暮らしぶりがうらやましくなってくる天。あげはに入寮を勧められている時に、同じ寮に住んでいる下宿生・千秋がツルゲーネフの言葉を引用してこう言ってくるのです。
「乗りかけた船にはためらわず乗ってしまえ」
天はその言葉に背中を押され、入寮を決めます。
人気作品『日々蝶々』の作者・森下suuの新作です。『日々蝶々』で特徴だったのは、妖精のようにピュアで可愛い主人公でした。本作品でもどこか浮世離れした異星人のようなキャラクターが、今回は男女ふたり分楽しめます。本書はそんなふたりとその他個性豊かなキャラクターの恋愛模様、心の動きが魅力的な作品です。
異星人系キャラクター、一人目は主人公の天。顔のデフォはほぼ無表情、意志が固く、友達には「岩」っぽいと呼ばれるちょっと変わった女子高生です。
二人目は天の入寮の背中を押した、学年でも噂のイケメン・千秋。彼もまたほぼ無表情。本ばかり読んでいて、その経験から会話の折々に偉人の名言を入れてくる変わった男子高校生です。
ちょっとずれた異星人系のふたりが経験する「青春」は普通の人よりもダイレクトな甘酸っぱさがあります。素直なふたりは出会う気持ちひとつひとつにまっすぐに向き合います。そしてそんな彼らに影響されて、周囲も怖がりながらも自分の気持ちを大切に扱うようになるのです。
そんな異星人系なふたりにちょっと軽いモテ男・理久が加わり、胸キュンなラブストーリーが展開されていきます。そんなラブストーリーを個性が際立ったサブキャラクターたちが彩ります。顔がゆるキャラっぽいのに結構ズバズバ言ってくる親友・あげは、ツンデレ坊ちゃん・鈴など、それぞれが丁寧に描かれているのでメインキャラクターではなくても感情移入してしまいます。
そんな登場人物たちはみんな純粋。森下suuらしい、どこまでも透明であたたかい世界観を作っています。ピュアな青春が森下suuのキュートな絵柄で楽しめる、下宿内ラブストーリー。キュンキュンすること間違いなしです。
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8位:She is so Cool, Grandma!!
田舎の百目鬼村で一帯を取り仕切る女総領・百目鬼ミキ。梅の屏風の前で和服をパリッと着こなし、キセルを燻らせながら村民の悩みに助言します。ご近所同士の小競り合いがヒートアップしそうになった時も、彼女の一声があれば満場一致の解決となります。
本作品は何と言っても和製ゴッドマザーのようなグランマのかっこよさが魅力的。ご紹介した村の集会でもそうですが、言うこと成すこと、そのたたずまい、どれもクール。サングラスで庭の水やりをするところも妙にしっくりくるのは彼女くらいではないでしょうか。
- 著者
- 高口 里純
- 出版日
- 2016-08-17
そんなグランマと「いいコンビ」である孫の亜子。物語では彼女がクールなグランマの魅力を引き出すのに一役買っています。ふたりのやりとりはあけすけでまっすぐ。テンポのいい会話には名言も多々あり、すらすらと読みながら感動させられてしまいます。
ある日、亜子はお出かけしたグランマに届け物をするために母親と一緒に東京のホテルに向かいます。そこで彼女はさまざまな「グランマ」に出会い、話をします。
端的な物言いの洒落た洋装の女性と鳥の鳴き方クイズをしたり、和装で博識さが漂う女性が新米お母さんにびしっとアドバイスする様子を横で見たり、はおじいさんのような見た目のきっぷのいい女性に化粧をするようアドバイスしたり……。どの女性も芯が通っており、亜子はその姿に自分のグランマを重ね、早く会いたくなります。
実は彼女たちこそ、並々ならぬ肩書きを持ったグランマの旧知の友人で、4人でランチをするためこのホテルに集まったのでした。彼女たちの女子会は軽口をたたきながらもどこか貫禄のある雰囲気。こんな風に年をとりたいと思えるような粋と余裕を感じさせます。
キャラクター漫画は雰囲気やセリフで読ませるものが多く、こちらの作品もセリフに際立つ点が多く見られます。祖母が孫に話すという構成なので比較的平易な言葉を使っているので分かりやすく、ストレートに心に響いてくるものばかり。海外の名作映画を見ているかのようなクールなキャラクターとセリフにしびれる作品です。