5位 超能力を隠し、普通に過ごす少年の出会いから始まる物語。『サイコスタッフ』
- 著者
- 水上 悟志
- 出版日
- 2007-10-27
1冊で完結する、非常にコンパクトな作品です。最初から1冊にまとめるために書かれた作品なので、密度と完成度が非常に高くなっています。物語としてはSF要素の強い王道なボーイミーツガールもの。テーマはセカイ系に近いのですが、実に明快で爽快に描かれているのが人気の理由です。
超能力者であることを隠して暮らしていた主人公・光一のもとに現れたのは、梅子という名の一人の少女でした。彼女は自分を惑星ルルイエの宇宙軍超能力部隊のスカウトであると名乗ります。
梅子は全力で光一を連行しようとしますが、あまりにも強い光一の能力に阻まれてしまいます。その後も光一に付きまとう梅子。しかし、少しずつ彼との関係は変化していくのです。そしてある日、光一が、街を襲う巨大隕石を止めると決意したとき、物語は大きく動き始めるのでした。
ハードなSF作品ではなく、コメディのある青春ものとしての要素をもち合わせている作品です。序盤はとにかくドタバタなラブコメ要素が強く、特にコメディのテイストが濃くなっています。しかし、隕石の接近からがらりと雰囲気が変わります。とはいえ隕石は話の本筋ではありません。この作品は、主人公が隕石をどうするか、ではなく、主人公を巡る人間ドラマにあるのです。
1冊で満足感が得られるとても良い作品です。
4位 命を懸けた金もうけゲーム。『ダズハント』
- 著者
- 筒井 哲也
- 出版日
- 2005-05-25
主人公は、老人介護サービス会社に勤めるナカニシという男です。仕事で日々ストレスをためていた彼は、インターネット上でエクサムという人物から、あるゲームを勧められます。そのゲームこそが、タイトルにもなっている「ダズハント」。マーキーという携帯端末を奪い合い、賞金を獲得できるという内容でした。
ナカニシは次第にそのゲームにのめり込んでいきますが、しばらくして生ぬるさを感じるようになっていきます。そんな時、彼に、命の危険がある「エクストラゲーム」の紹介が舞い込んできたのでした。
分類としては「デスゲームもの」に当たる作品です。非常に高い画力によって生み出される精緻な画面作りと、作り込まれたゲームの展開で、144Pと短い中でも読者を魅了させてくれます。飽きさせずぐいぐい引き込まれてしまうストーリーに、ゲームの戦略的、心理的な駆け引きが加わり、ひと息に読み終えてしまうでしょう。さらには社会的なテーマも非常に深く、なぜエクストラゲームが開催されたのかという謎も物語の全体像に深くかかわっていきます。
もともとはWEBサイト上で公開されていたウェブコミックですが、高い評価を受け、後に単行本化された作品です。1冊で読み切れるものですが、読んだ後に、自分はどう思ったのか、他の人はどう思うのだろうかと、考えてみたくなる作品です。
3位 鬼を殺せば、自分の身近な人が死ぬ。『世界鬼』
- 著者
- 岡部 閏
- 出版日
- 2012-12-18
「鏡の国のアリス症候群」という、鏡の中に幻想が見える奇病を患う少女・東雲あづまが主人公となる作品です。叔父一家の世話になっている彼女ですが、実は一家全員から暴力を受ける日々を過ごしているという、悲惨な状況から物語は始まります。
ある日、彼女は同じ病を抱えた6人と共に、鏡の向こうの異空間へと召喚されます。チェシャ鬼と名乗る案内役によると、そこは「ワンダーランド」という場所で、あづまたちは「アリス」として「世界鬼」を倒さなくてはならないことを告げるのです。
登場人物が皆、どこか狂っているという少し狂気じみた作品です。同じようにアリスとして戦うことになった仲間たちは、誰か1人の人間に依存しないと生きられなかったり、薬をやって服役中だったり、セックスを過剰なまでに求めたりしています。
物語の途中、「世界鬼を倒せば、現実世界で自分たちの身近な人間が死ぬ」ことが明らかになります。この事実を知って嘆き、悩む人もいるなか、あづまは他の誰よりも世界鬼、すなわち自分の家族を殺すことに、執着します。自分に虐待した叔父一家を間接的に殺すことで復讐を果たし、楽しむように「つぎだーれだ?」と彼女は笑って言うのです。
彼らの未来はどうなるのか、世界鬼を倒しきることができるのか。とにかく先が気になって一気に読んでしまう魅力に、どんどんと引き込まれてしまいます。